6話 僕に出来る事

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「体の事・・・・黙ってたのがいけなかったんですかね?ますます心配性になった気がします。」 「だからあの時言っただろう?『京哉さんと奥さんと一緒に来い』って。京哉さんだけ連れてくるからそんな事になったんだろう?蒼空が一番悪い。」  藤岡はそう言いながら、蒼空の体に聴診器を当てて診察を続ける。ふと、腕にある包帯の存在に気がついた。 「蒼空・・・・このケガ。どうかしたのか?」  やっぱり聞かれたかと心の中で思った。ここで下手に誤魔化す訳にもいかず、蒼空は正直に昨日の事を話した。 「――――だから、大したケガじゃないです。ちょっと破片で切っただけで、手当てが大げさ過ぎるだけですから。・・・・それより先生、どうなんですか?」  一通り診察を終えた藤岡は、カルテを手に取った。 「今回も悪い数値が出ている所は・・・・ないな。」  それを聞いて蒼空はホッとした。 「――――だが。私に言わせれば、少し不可解だな。この間倒れた時の数値とは、差がありすぎるんだ。」 「それって・・・・どういう意味ですか?」  不安そうな顔をしている蒼空を見て、藤岡は彼の肩をポンポンと叩く。 「そんな顔をするな。こういう状態になって良くなっていった例があるってだけの事だ。安心しなさい。」  しかしそういう藤岡は・・・・何だか胸騒ぎがしていた。 「今日は随分早かったね。大丈夫だったの?」  車を止めてある場所まで歩きながら、彩華がそう言った。  予約の時間まで時間があって、商店街で買い物してから病院に行ったため、車は商店街の駐車場にあった。 「状態が良すぎるって先生ビックリしてた。」  今日の商店街はいつもと違って、大型のトラックが黒い排気ガスを出しながら、何台も道路を通り過ぎていく。 「そうだね。最近の蒼空、本当に調子いいもんね。」  そう言って隣を歩く蒼空の方を見るが、そこに彼の姿はなかった。彩華はふと、後ろを振り返る。 「・・・・ケホッ、ケホッ。」  蒼空はその場に立ち止まって、息を乱していた。 「蒼空、大丈夫?」 「・・・・ケホッ、ケホッ、ケホッ。だっ、大丈夫。さっきの車の排気ガス、吸い込んじゃった、だけっ。」  何度も通り過ぎるトラックの排気ガスが、蒼空の気管を刺激して、呼吸を辛くさせていく。 「――――ツっ。・・・・ハアッ、ハアッ、ハアッ。」  蒼空は苦しさのあまり、その場にしゃがみ込んでしまった。
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