6話 僕に出来る事

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「ゆっくり深呼吸だよ、蒼空。」  彼の背中を、彩華が優しくさすってやった。 「・・・・ケホッ、ケホッ、ケホッ・・・ハアッ、ハアッ・・・ふぅ。――――ありがと、彩華。」  ようやく落ち着いてきた蒼空は立ち上がると、彩華に笑顔を見せた。  ついさっき検査を終えて帰ったはずだったのに、病院に戻る羽目になってしまった。午前中の診療時間はもう過ぎていて、受付は閉まっていた。 「どうしようっ。なんとかならないかな。」  彩華もいつもならこんなに慌てたりしないのだが、今日は蒼空にとっては大事な吸入器を家に忘れてきてしまって、ここに戻るしかなかった。 「・・・・ゲホッ、ゲホッ・・・ゴホッ。」  あの後すぐに落ち着いたかと思いきや、すぐまた咳き込んでしまったのだ。 「蒼空っ、しっかり。」  そう言いながら、彩華は優しく背中をさすった。 「ん?蒼空・・・まだ帰ってなかったのか?」  そこへタイミング良く藤岡がやってきた。片手にお弁当と、お茶の入ったペットボトルを持ったまま歩いてくる。 「それが・・・帰る途中でこうなってしまって。」 「・・・・ハアッ、ハアッ。・・・せん、せっ。」  蒼空は傍にやってきた藤岡の腕をつかみ、必死に助けを求めた。 「吸入器はどうしたんだ?」 「それが・・・今日は家に忘れてきてしまって。」  肩を上下させて必死に呼吸している蒼空の顔色は、とても酷かった。やはり調子が良いのはたまたまなだけで、本当は油断ならない体だった。 「・・・・ゲホッ、ゲホッ・・・ヒューヒュー、ゴホッ、ゴホッ。」 「発作が酷いな・・・。何か発作が誘発されるような事は?」 「えっと・・・トラックの排気ガスを吸い込んじゃってから、こうなりました。」  先ほどの排気ガスは、蒼空の気管に相当な刺激を与えてしまったらしく、酷い発作を引き起こしてしまった・・・。  発作の苦しさで動けない蒼空を、藤岡は軽々と抱き上げた。見た目ではあまりわからないが、蒼空の体は普通はなくてはならない男性の体重の半分くらいしかなかった。けれど、いい大人が抱っこされるというのは・・・正直、カッコ悪かった。  蒼空は処置室内のベットに寝かされたが、横になっている方が余計に苦しくて、すぐに起き上がって必死に呼吸をくり返した。 「・・・・ツっ。・・・・ハアッ、ハアッ・・・ゼィ、ヒュー。」 「蒼空。ほら、吸入器だ。」
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