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笑顔を見せる蒼空だが、顔色は良いとは言えなかった。
「・・・・とまあ、ジョーダンは置いといて。――――ホラ、行けよ。」
司に引っ張られて姿を現したその子に、蒼空は驚いた様子を見せた。
「――――彩華。」
「蒼空、オレ用事思い出したから帰るわ。じゃあな・・・・ちゃんとチューしろよぉ。」
そう言って司は、さっさと病室から出ていった。
二人きりにされてしまった蒼空と彩華の間に、沈黙が流れる。
「「・・・・・。」」
しばらくして、蒼空は口を開いた。
「・・・・彩華。ねぇ、もっと・・・僕の傍に来て。」
今の蒼空には自分で彩華の所に行ける程の体力はない。前の時みたいに無理をして立ち上がろうとする力もなく、こうして起き上がっているのが精一杯だった。でも、今すぐにでも抱きしめてやりたい気持ちが溢れてくるのに、体は思うように・・・動かない。
「・・・・蒼空、あのっ――――ッはわっ!」
言われた通りに傍に来た彩華は、突然抱きしめられた。
「彩華っ・・・・会いたかった、会いたかったよっ。」
抑え込んでいた気持ちが溢れて、蒼空は涙が止まらなかった。
「君に会いたいのに会えなくてっ、不安で・・・・僕はもうっ。」
まるで幼い子供みたいに泣いている蒼空の姿を、彩華は見た事がなかった。いつも強がっていたし、そもそも男性は涙なんて滅多に見せないだろう。
「・・・・大丈夫だよ、蒼空。私はちゃんと、ここにいるよ。」
彩華はギュッと彼を抱きしめ返した。でも、蒼空の涙は・・・止まらない。
「怖かったんだ。このままっ、このまま君に・・・もう会えな――――――。」
彩華は蒼空の言葉を――――遮った。
「「――――。」」
二人の唇が・・・・優しく重なった。
「怖くないよ、蒼空。言ったでしょ?何があっても私がついてるからって・・・。だから、もう泣かないで。」
「・・・・うん。」
「早く元気になって、一緒にまた・・・学校行こう?」
「・・・・うん、そうだね。」
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