7話 大切な人、愛する人

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「あれ・・・蒼空?どこか出かけるの?」  玄関で靴を履いている彼を見つけた彩華は、そう声をかけた。  蒼空の体がビクリと反応して、そろそろとこちらを振り返る。 「あぁ、ちょっと司に買い物付き合ってくれって・・・頼まれてさ。」 「・・・・本当かなぁ?」  彩華は疑り深そうに蒼空をじっと見つめた。前の時もこうやって誤魔化して、病院に行った事があったためか、そう簡単に信じられなかった。 「本当だってば!買い物が終わったらすぐ帰るから。行ってきまーす!」  そう言ってそそくさと出て行く蒼空を見送った彩華だったが、いつも以上に元気に振るまっている彼の姿が・・・・不思議に思えた。 「何だよ、家出て来る時そんな事があったのか。誤魔化すのも大変だな、蒼空。」  商店街を歩きながら朝の出来事を司に話すと、彼はケラケラと笑った。 「まぁ・・・とにかく、目的の物が買えたからよかった。」  蒼空は手に小さな紙袋を持っていて、『happy birthday』のシールが貼られていた。 「明日はアヤちゃんの誕生日だもんなぁ。ひゅーひゅー!アツイね!」 「何バカな事言ってんだよ、もぅ。そういう司だって、愛しの奥さんとの結婚記念日のプレゼント持ってるじゃないかっ。」 「おいっ、〝愛しの〟とか言うなよ。恥ずかしいだろ?―――――っおお!!」  ケラケラと笑っていた司はふと、ある店の前で足を止めた。 「今日はDVDの発売日だったのすっかり忘れてたぜ。蒼空、ちょっと行って来てもいいか?」  それは司が学生時代の時からハマっている、あの刑事ドラマだった。入口の前に発売の告知ポスターが貼られていて、なんと今この店で買うとポスターもついてくるらしい。 「司、本当にこのドラマ好きだなー。僕には良さが分からないよ。まぁ・・・とりあえず行ってきなよ。僕はこの辺で待ってるからさ。」 「悪いな、蒼空。」  司はそう言って、店の中に入って行った。  蒼空は店の近くにあった小さな噴水広場のベンチに座り込んだ。 「・・・・ふぅ。」  司の姿が見えなくなった事で気が抜けたのか、一気に体がダルさに支配された。本当は朝からあまり体の調子が良くなかった。でも今日は、無理をしてでも買いに来たかった。   ―――愛する人が生まれた・・・大切な日だから。 ―――自分に出来る・・・数少ない事だから。
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