7話 大切な人、愛する人

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 でも、無理をすれば後からどうなるかなんて・・・わかっていた。 「・・・・ツっ。」  息苦しさを感じて、蒼空は胸元に手を当てて呼吸を整えようとした。 (家に帰るまでは持つと思ってたのに。・・・・マズイな、こんな時にっ。) 「・・・・ハァッ、ハァッ・・・。」  息がどんどん苦しくなってきて、蒼空は胸をギュっとつかんだ。 「・・・あの、大丈夫ですか?」 ふと、そう声をかけられて顔を上げると、そこに一人の女性が立っていた。どことなく彩華に似た姿の彼女が、見つめてくる。 「・・・・ハァッ、ハァッ・・・。いつもの、事なんで――――ケホッ、ケホッ。」 「よろしければ、私の働いている病院に案内してあげますわ。」 「・・・・ケホッ、ケホッ、コホッ。だっ、大丈夫ですから、ご心配・・・なさら、ず。」  その女性の所に、今度は一人の男性がやってきた。 「どうかしたのかい?早く行かないと、予約したランチに間に合わなくなるよ?」 「この方、何だか具合が悪そうだったので・・・心配で。」  その男性は蒼空を見るなり、驚いた顔をした。 「蒼空じゃないかっ。こんな所でどうしたんだい?誰かと一緒じゃないのか?」 「・・・・おまえ、は・・・大輝っ。――――ツっ・・・ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ。」  喘息の発作が起きてきて、蒼空は咳き込んだ。もう話をしているどころではなかった。まだ司が戻って来てない今、自分でポケットから吸入器を出してそれをしなければならなかった。何とか吸入器を取り出し、それをしようとした――――。 「・・・・ハァッ、ハァッ。――――いっ!!」  しばらくなかった胸の激痛が襲ってきて、蒼空は吸入器を取り落した。 「これが必要なんだね、蒼空。・・・ほら。」  大輝は蒼空が落とした吸入器を拾って、慣れた手つきで蒼空にしてやった。 「・・・・ゲホッ、ゲホッ、ケホッ・・・コホン。助かったよ、大輝。」 「別に大した事はないさ。僕の大好きなこの子のお母様が喘息もちでね、使い方を知っていたってだけさ。・・・さて、もう大丈夫みたいだから、僕達は行くよ。」 「あぁ。ありがとう、大輝。」  そう言って去っていく二人を見送っていた蒼空の視線は自然と、彩華にどこか似ている彼女の方を・・・ずっと見ていた。
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