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差し出されたのは一つの紙袋だった。貼られたシールが、それが何の為なのかを教えてくれた。
「もしかして、私のために・・・そんな体で無理して行ったの?」
「そうだよ。だって、大切な日だろ?だったらちゃんと・・・・祝わなきゃ。」
彩華は嬉しかった。蒼空の体調が悪くなった為に、今年はそんな事をしてるどころではないと思っていたから。何があろうと、ちゃんと祝ってくれる彼の気持ちが・・・・嬉しかったのだ。
「もう・・・蒼空のバカっ。そんなの聞いたら、怒れないじゃない。」
蒼空はすっと彩華を引き寄せて、優しく・・・抱きしめた。
「彩華・・・。スキ、大好き・・・・ホントに好き。」
「うん。私も大好きだよ――――っはわ。」
彩華をベットに押し倒した蒼空は、深いキスをした。
「ダメよ蒼空。熱あるんだから、ねてな―――んっ・・・。」
そうして二人だけの時間が過ぎようとしていたが、玄関が開く音が聞こえてきてその時間は終わりをつげた。
「・・・たっ、ただいまっ。」
部屋に入ってきたのは、勇太だった。急いで来たのか、少し息を切らしていた。
「お帰り、勇太。今日は早かったな。帰りに司の家に寄って、愛羅と遊んで来るんじゃなかったのか?」
「愛羅の家には行ったよ。けど、司兄ちゃんから父さんの事聞いたから、すぐに帰って来たんだ。・・・それより父さん、体は?大丈夫?」
「大丈夫だよ。入院したわけじゃないんだから、心配するな。」
勇太の頭を優しくなでながら、蒼空は笑顔で答えた。
「でもっ・・・。」
「だから、『やっぱり運動会来なくていいや』なんて言うなよ?父さんも楽しみにしてるんだからな?」
勇太はじっと蒼空を見つめた。
「当日、ちゃんと見に行くからな勇太。約束だぞ?」
「・・・うんっ!約束っ!」
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