146人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
今日は勇太の学校の運動会当日だ。家の中では朝早くから準備でバタバタしていた。彩奈も早くから起きていて、彩華のお手伝いだ。
しかし蒼空は目は覚めてはいても、なかなかベットから出られないでいた。
「・・・・ケホッ、ケホッ。」
朝から体がダルくて、頭も少しボーッとしている気がした。だからといって息子の運動会に行かない訳にはいかなかった。
毎年何かのイベントがあると、大抵体の調子が悪くなって、行ってやれない事の方が多かった。だからこそ、尚更行かなければと・・・思うのだ。
『父さんっ!約束だからねっ!僕、待ってるから!』
先ほど一足先に学校に行った勇太が、笑顔でそう言った息子を・・・裏切りたくなかった。
「・・・・ダメだっ。約束はっ、守らなきゃっ・・・。」
蒼空はゆっくりと起き上がると、着替えをはじめた。
彩華は今日持っていくお弁当をせっせと作っていると、まだ蒼空が起きていない事に気がついた。
「もうこんな時間なのに、蒼空は何してるんだろ?彩奈、パパ起こしてきてくれる?」
「はぁい、ママ。隊員一号、行ってきまぁす!」
彩奈は軍人なんかがよくやる敬礼を真似して、テトテトと階段を登って行き、蒼空のいる部屋の扉を・・・開けた―――。
* * *
突然胸に激痛を感じて、僕はギュッと胸をつかんだ。
「・・・・ツっ、・・・うっ!」
いつもとは違う、喘息の発作でも軽い胸の痛みとも違う・・・耐えきれない程の激痛が走る。
「・・・・ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・いっ!!」
――――前にも同じような事が、あったような気がする。
「パパっ!どうしたの!大丈夫!?」
――――でも・・・いつ?どこで?
心配そうに僕の顔を見る彩奈が、そこにいた。僕は痛みに耐えながら、なんとか言葉を絞り出した。
「・・・・ハアッ、ハアッ。・・・あや、な・・・・母、さんっ――――あや、か呼んでっ!」
慌てて部屋を出て行く彩奈を確認した僕は、立っていられなくなって、その場に座り込んだ。
「・・・・ハアッ、ハアッ・・・ゼィゼィ。」
激痛は治まってきたけど、今度は喘息の発作が起きてきて、息が苦しかった。発作を落ち着ける為の吸入器が自分の手が届く所になくて、どんどん呼吸が辛くなってくる。
「・・・・ゼィゼィ――――ヒューヒュー・・・。」
――――同じような事があったの、いつだったかな?
最初のコメントを投稿しよう!