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「蒼空っ!しっかりっ!大丈夫っ!?」
彩華がそう言って、僕を抱きしめてきた。
――――あぁ、思い出した。高校のあの時、彩華に屋上に呼び出された時だ・・・。
「・・・・ハアッ!ハアッ!ハアッ!」
呼吸をするだけで精一杯で、言葉を口にする余裕はなかった。
――――そうだ。あの後僕は・・・死にかけたんだ。
* * *
* *
『あぁ、約束するよ。今日は必ず、見に行くからな。』
そう言って今朝約束してくれた蒼空を・・・勇太は信じてずっと待っていた。しかし、何度保護者席の方を見ても、彼の姿は見当たらない。それどころか、彩華や彩奈の姿さえも見当たらなかった。
「・・・・約束、したのにっ。」
そこへクラスの男子が一人やってきて、保護者席を指差しながら話しかけてきた。
「なぁなぁ勇太。おまえの父ちゃんどこにいるんだ?教えてよ!」
今一番聞きたくなかったその言葉は、勇太の心に深く突き刺さった。
「もうっ!何でおまえはいつも、僕が一番聞かれたくない事ばっか言ってくるんだよっ!」
あんなに期待をさせておいて約束を破った蒼空を、勇太は許せなかった。そんな気持ちをどこにぶつけたらいいかわからず、それをその子にぶつける。
「はあ?どういう意味かわかんないよ!ただおまえの父ちゃんがどこにいるのか聞いただけなのに、どうして怒るんだよ!」
「僕はっ・・・そんな事聞かれたくないんだよっ!僕はっ・・・・みんなとっ、みんなと同じじゃないんだっ!」
勇太は怒りに任せて、思い切りその子に、拳を振り上げた。
「・・・・っと。やめな、勇太。その子に怒りをぶつけて、何かが解決するのか?」
振り上げたその手を、光輝が後ろからつかんで止めた。
「・・・ごめん。何やってるんだろ、僕っ。」
「ねぇ・・・勇ちゃん。誰か大人の人がこっちに走って来るけど、あれってもしかして・・・おじさまじゃないですの?」
近くにいた愛羅にそう言われて顔を上げると、一人の男性が傍まで走ってきた。
「キョウおじさん、見に来てくれたんだね!ねっ、お母さん達は?」
勇太はキョロキョロとあたりを見まわした。
「・・・・勇太。」
深刻な顔でそう言ってくる京哉を見た勇太は、見に来てくれたという訳ではない事に気づいた。
「・・・どうしたの?キョウおじさん?」
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