8話 約束

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「今日は早退しなさい。・・・・おまえの父さん、蒼空が救急車で病院に運ばれた。」  突然聞かされた事実に、勇太の心は一気に氷付いた――――。       *     *  救急搬入口にストレッチャーで運ばれてきた蒼空を、藤岡は待っていた。 「状況は!?」 「心拍数が上昇していて、呼吸困難を起こしています。」  救急隊員の一人が手動の呼吸器を動かし、酸素を彼に送りながら言う。 「意識レベルは!?」 「呼びかけには反応しますが、ほとんど話せない状態です。」 「蒼空っ、私の声が聞こえるかっ!わかるなら手でもいいから返事をしろっ!」  蒼空はうっすらと目を開けると、かすれた声で途切れ途切れに言葉を口にした。 「・・・・・・・・ハアッ、ハアッ、ハアッ。せん、せ・・・僕っ、今度こそ・・・・ダメ、かな?」 「バカを言うなっ!そんな事あるものか!諦めるな、蒼空!」  しかし症状は悪化する一方だった。またあの時と同じ状態になりつつあった。蒼空の唇がみるみるうちに紫色に変色していく。 「マズイな・・・チアノーゼが出てきたか。」 「・・・・ハアッ!ハアッ!ハアッ!」  もう話す余裕がなくなり、蒼空は呼吸だけを必死にくり返す。 「急いで処置室に頼むっ!」 ――――ゴメンな、勇太・・・。  目が覚めた蒼空が一番先に見たのは、やはりあの白い天井だった。 (・・・・白い天井さんだ。って事は、僕はまだ・・・生きてる?) 「蒼空っ!よかった・・・目が覚めたんだねっ!」  ベットで横になっている蒼空に、彩華は抱きついた。 「・・・・あ、や・・・かっ。」  声はかすれていて、小さな声にしかならなかった。 「何でここにいるのか・・・ちゃんとわかるか、蒼空。」  ちょうど診察に来ていた藤岡は、聴診器で蒼空の胸の音を聞きながらそう言った。 「・・・・せん、せ。僕っ・・・何日、くらい・・・寝てた?」 「一週間だな。」 「・・・・そっか。じゃあ、結局僕はっ・・・行って、やれなかった、のか。」  あんなに楽しみにしていた勇太に、蒼空は結局・・・・約束を守れなかった。出来る限りの事はしてやろう思う気持ちはあっても、彼の体はそれにこたえてくれない。 「蒼空、体の方はどうだ?起きれそうか?」  藤岡にそう声をかけられ我に返った蒼空は、出来る限り明るく振るまった。
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