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雪も溶け、春の暖かさを感じるようになった頃、蒼空は学校にまた通いはじめていた。しかし、当たり前なはずだった徒歩での通学なんて、先生に許可される訳がなかった。いや・・・許可されたとしても、一日の授業に出るのが精一杯な彼には出来ないだろう。退院は出来ても、一年前と同じような体力は・・・ない。
いつものように学校の校門近くまで京哉に送ってもらった蒼空は、溜息をついた。
「・・・何か今日は、朝から調子悪そうだな蒼空。大丈夫か?」
家が近所なためかこちらもいつものように一緒に車で送ってもらった司が、心配そうに蒼空を見る。
「うん・・・まぁ。今日は無事に一日を過ごせるか、自信がない・・・かな。」
再び溜息をついた蒼空の額に、そっと手が当てられる。
「ん~。ちょっといつもより熱っぽい、かな?・・・おはよ蒼空、大丈夫?」
いつの間にか来ていた彩華が、蒼空の目の前に立っていた。
「えっ、ちょっ・・・。おは、よ。」
突然のこの状況に、蒼空はドキリとした。
「あ・・・今またちょっと上がった?」
「えっ、ち・・・違うよ今のはっ!!これは彩華がっっ――――。」
「ん?私がなぁに?何かしたっけ?」
目の前で首を傾げている彼女の姿は、蒼空の心をドキドキさせた。
(・・・そんなの反則だよ、彩華。)
「「――――。」」
「おーおー。こんな校門の前でよくやるなぁ、おまえは。」
司の声で我に返り、目の前で顔を赤くしている彩華の姿を見て、今自分が何をしたのかに蒼空は気づいた。
「・・・・ご、ごめん。彩華が悪いんだからなっ。そんなっ・・・可愛い顔っ、する――――。」
「「――――。」」
そんな彼の唇に先ほどと同じ、感触がした。
「あんな所で何、バカップルモード発動してんだよ。」
「ちょっ・・・バカップルモードって、何だよソレっ!?」
「そのまんまじゃねぇか。あんな生徒沢山いる校門前で何二人してチューしてんだか。」
あの後、まわりにいた生徒の中の女子達のキャーキャーと騒ぐ声で二人とも我に返り、教室まで逃げてきたのだ。
「そ、それはそうだけど・・・。あれはっ――――。」
(あんな姿見せてくる彩華が悪いんだ。あんなの・・・ドキドキしないわけがない。)
いつものようにからかってくる司と、大切な彩華が隣にいるいつもと同じ時間。変わってしまった事は多いけど、蒼空はそれだけでも充分幸せだった。
しかし――――。
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