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コンッコンッ・・・。
病室の扉が軽くノックされて、蒼空は「はい。」と返事をした。しかし声を出す元気もなくて、その声は相手に聞こえてないかも知れなかった。
扉が少しだけ開いて、中を覗き込んでいた。
「・・・・勇、太。」
それが誰かに気づいた蒼空は、元気のない小さな声でそう言った。
「お・・・お父さんっ!目、覚めたんだねっ!」
蒼空が起きていると気づいて、勇太はベットの傍に走りよった。
「・・・・ゴメンな、勇太。約束、したのに・・・・行って、やれなくてっ・・・。」
「そんなっ、お父さんは何も悪くないよっ!悪いのは僕だよ!こんな事が起こるかもしれないってわかってたはずなのにっ・・・・約束守ってくれなかったお父さんが許せないとかっ、思っちゃったんだっ、もんっ!」
そこには、いつものしっかりしたお兄ちゃんの勇太はいなかった。話しているうちに涙が溢れてきて、泣きじゃくっていた。
「・・・・勇、太。それで、いいんだ。怒ったりして当然、なんだから。僕が、みんなと、違うだけで、たくさん・・・・我慢、させてる。」
蒼空は何とか手を動かして、勇太の頭を優しくなでた。
「・・・・もういいよ、お父さん。僕ねっ、絶対行かなきゃっていうその気持ちだけでも充分嬉しかったんだ。だからね――――。
「お父さん、ありがとう。」
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