10話 不思議な力

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 病状が少し落ち着いてきたある日。藤岡は蒼空に、今の体の事を話した。心臓の状態が良くない事、最悪手術をしなければならなくなる事も・・・。  でも、それを聞いた蒼空は落ち着いていて、「怖い。」とも言わずただあっさりと受け入れ、いたって元気そうだった。 「ねぇ、蒼空。先生にあんな事告げられて・・・・怖くないの?」  そんな姿を見た彩華は心配になった。いつもみたいにまわりに気を使って、我慢しているのではないかと。 「・・・・そりゃあ、怖いよ。でも、この前ほどの怖さはない、かな。」 「この前?・・・・それってもしかして、あの時?」  彩華が思い当たるのは、一つしかなかった。何日か前に高熱と発作を起こした後に目を覚ました時、怖さで震えていたあの時だ。 「そうだよ。あの時は、いつもみたいに突然怖くなった訳じゃないんだ。」  あの時・・・・頭の中でずっと繰り返されていた、藤岡の言葉。今まで以上の恐怖に、蒼空は襲われた。 「何も覚えてないって言ったけど、藤岡先生の言葉が頭にハッキリ残ってて・・・・それが何度も思い出されて、怖かったんだ。」 ――――『以前よりも・・・・心臓の病気の方が悪化しているんだ。』 「だから・・・・初めて聞いた気がしなかったから、まだ平気。」   コンコン・・・。  その時病室の扉がノックされた。それに対して蒼空が「はい。」と返事をすると、白衣を着た女性が入ってきた。 「調子はどうかしら、蒼空君。」  その女性がこの前も病室に来ていたあの人である事に気づいて、彩華は眉間にシワを寄せて、じっとその女性を見る。 「真矢さん、また来てくれたんですか?アイツに怒られますよ?」 「大丈夫ですわ。だってあの人とあなたは、お友達なんですわよね?」 「まぁ・・・・友人というか、ライバルだったというか。」  ふと彩華を見た蒼空は、彼女の怒ったような顔をしている姿に、自然と笑みがこぼれた。いかにも「あなた誰よ!」と言っているような顔だった。  この前といい今といい、名前も知らない女の人が彼と仲良くしているのが・・・彩華は許せない。  蒼空はもちろんその気持ちに気づいていた。じっと真矢を見つめる彩華の手をつかんで、すっと抱き寄せた。 「えっ、ちょっ・・・・何っ。」  いきなり抱き寄せられた事に、彩華は驚きと恥ずかしさを隠せなかった。 「まだ紹介してなかったよね。この人が僕の大切な人だよ、杉波先生。」
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