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「え・・・・?今なんて言ったの?杉波って・・・。」
「そ。真矢さんは、大輝の奥さんなんだよ。・・・・納得した?」
心の中に渦巻いていた気持ちが、一気に消え去った。彩華は自分が勘違いをしていた事に、やっと気づいた。
「初めまして、彩華さん。私は『杉波 真矢』。この病院の心療科で働いてるわ。」
「はっ、はい。私は『大河 彩華』・・・です。」
そんな二人のやりとりが終わった時、真矢の方が時計を見るや慌てはじめた。
「あら、もうこんな時間。午後の外来が始まっちゃうわ。じゃあね蒼空君、お大事に。」
真矢は笑顔でそう言って、病室を出て行った。
病室には二人だけになり、蒼空はいきなり彩華にキスをした。
「「――――。」」
「彩華。妬いてただろ?」
「ちっ、違うもんっ。」
顔を真っ赤にして否定する彩華の顔は、全く説得力がない。
「違わないだろ?僕と真矢さんが何か関係持ってるんじゃないかとか、考えただろ?」
「そっ、そんな事考えてないもんっ。蒼空のイジワルっ。・・・・あなただってあの真矢さん見つめてポーッとしてたでしょ!」
「あぁ・・・・あの時の事言ってるのか?まぁ、確かにポーッとはしてたかな。」
あっさり認めた彼に、彩華は少しイラッっとした。
「だってさ・・・・凄く似てるから。――――君と。」
蒼空が真矢会った時は、いつもその人の先に・・・・彩華を見ていた。
「だからさ、真矢さんを見てると君の事思い出しちゃって・・・・ドキドキしちゃうんだ。」
彼女と何か関係を持ってるかもなんて、考える事はなかった。大好きな彼は、こんなにも自分の事を想ってくれていた。
「――――だって、何かイヤだったんだもん。私の知らない人と、すっごく楽しそうに話してたから。」
「バカだなぁ、彩華は。そんな事考える必要なんてないだろ?僕には――――君しかいないんだ。彩華じゃなきゃ・・・・ダメなんだ。」
症状が少し落ち着いたとは言っても、それは大した変化ではなかった。病室内くらいなら、何とか動く事が出来るようになった。しかし、発作の方は当たり前のように起きるし、少しでも無理をするとすぐ熱を出してしまう事も多かった。
今日は少し調子が良かったので、蒼空は飲み物を買いに病室を出た。起き上がれない時の方が多くて病室の中にばかりいると、尚更気が滅入ってしまう。病棟内にある自販機までの・・・・ちょっとした気分転換のつもりだった。
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