10話 不思議な力

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 すれ違う看護師や先生達はみんな、「起きて大丈夫なの?」と心配ばかりだ。誰かに面会に来ていた女性達は、僕を見るなり「あの人、すっごいイケメンじゃない?」とか「カッコイイ」とかとヒソヒソと話している。何だか学生時代に戻ったみたいで、少し嬉しかった。  ほとんど病室内の生活ばかりなので、自販機のところまでというのは少し辛いかと思っていたが、意外とあっさりとその場についた。目的の飲み物を買って、蒼空は来た道を戻った。 「・・・・っ・・・ハアッ、ハアッ。」  しかし、そう思ったのもつかの間・・・・急に呼吸が苦しくなってきて、蒼空はその場に座り込んだ。近くにいた看護師が蒼空に気づいて、かけよってきた。 「蒼空君じゃないの!大丈夫?もしかして、発作?」  蒼空の事をいまだに“君”付けで呼ぶ人は、一人しかいなかった。小さい頃からお世話になっている・・・あの人だけだ。 「・・・・行く時は、大丈夫だったんだけどっ。病室に戻ろうと、思ったらっ、急に息が、苦しくなってっ。」 「そう。とにかく病室に戻りましょうか。立てる?」  蒼空は何とか立ち上がるが、グラリと視界が歪んで倒れそうになった。 「大丈夫か、蒼空。・・・・というか、そんな体で何で出歩いてるんだ?」  それを支えてくれたのは、ちょうど通りかかった藤岡だった。  藤岡のおかげで病室にはすぐ戻れたが、結局発作が起きてしまった。 「・・・・ハアッ、ハアッ・・・。ケホッケホッ、ゴホッ。」  少し調子が良かったからって病室を出歩いてしまった事を、蒼空は後悔した。 「まったく。どうせ、『ちょっとくらいなら大丈夫』とか思ったんだろう?それがいけないんだからな?」  藤岡はそう言いながら、体温計で彼の体温を測った。 「・・・・ハアッ、ハアッ・・・。だって、少しくらいっ・・・・ケホッ、ケホッ・・・外に出たかった、んだ。」 「気持ちはわかるさ、蒼空。だが無理をして苦しむのは・・・・おまえだ。」  体温計の音が鳴り、藤岡はソレに表示される数字を見て・・・・少し驚いた様子を見せた。 「・・・39.2度。いつもより少し高いな。」 「・・・・ねえっ、せん・・・せぇっ。」  蒼空の声にはもう・・・元気はなかった。話す事さえも、辛そうだった。 「何だい、蒼空。」 「・・・・ハアッ、ハアッ。来てくれ、て・・・助かった、けど。アレは――――はずか、しいよっ。」
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