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「さっきまで、あんなに元気だったのに。先生っ、蒼空を助けてっ!」
「なぜそんなに状態が回復したのかはわからないが、恐らくその反動でこうなったのかもしれないな。」
藤岡は彩華の肩を、優しくポンポンと叩いた。
「心配するな。蒼空は・・・・必ず助ける。」
処置室からストレッチャーに乗せられた蒼空が出てきた。彼の顔色は悪く、口に酸素マスクをしていた。
「蒼空っ!蒼空っ!」
彩華はすぐかけよって、彼の手をギュッと握り、必死に声をかける。
「・・・・ハアッ、ハアッ。―――あや、か・・・っ。」
蒼空はうっすらと目を開けて、弱々しく言った。
「なぁに、蒼空っ。」
「・・・・ハアッ、ハアッ。―――ごめ、ん、な・・・。」
蒼空の言葉はそれきりだった。彼の意識がなくなり、握りあっていた手がはなれた。
藤岡と何人かの看護師が、ストレッチャーを引っ張っていき、先にあった大きな入口の中に入って行った。入口の上についた赤いランプがつき、『手術中』の文字か表示された。
「蒼空のばかっ。ごめんって・・・・何よぅ。」
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