146人が本棚に入れています
本棚に追加
二時限目の今、黒板の前に立っている先生は例のアイツだ。今日もこの時間を何とかクリアしなければならないが、もうそんな事を考えているどころではなくなっていた。
「――――ッっ。」
呼吸が少し辛くなってきて、蒼空は胸に手を当てて呼吸を整えようとする。
「・・・・ハアッ・・・ハアッ・・・。」
それに気づいた司と彩華が、心配そうな顔をして、小声で言ってくる。
「大丈夫、蒼空?保健室行った方がいいんじゃない?」
「アヤちゃんの言う通りだ。あんま我慢し過ぎない方がいい。」
「・・・・ハアッ。そ・・・そうするっ。・・・・ハアッ・・・ハアッ。」
司は頷くと、席を立った。
「先生、蒼空君がなんか具合悪いみたいなんで、保健室に付き添ってもいいですか?」
すると先生が「またかよ」と言わんばかりの顔でこちらにやってきた。が――――蒼空の苦しそうにしている姿を目にして、絶句していた。
「あ・・・あぁ。」
絶句している先生を放っておき、司は蒼空に手を貸してやり彼を立たせた。
「ほら・・・行くぞ。蒼空、立てるか?」
「・・・・うん。まだ・・・・ハアッ・・・ハアッ・・・・何とかっ。」
ふらついた足どりで、蒼空は教室を出ていった。
保健室に来るなり、蒼空はベットに横になった。
「・・・・ケホッ・・・ケホッ・・・。」
呼吸は落ち着いてきたが、今度は軽い喘息の発作が彼を襲う。
「ホントに大丈夫か?早退するならついていくけど?」
「だっ、大丈夫だって。・・・僕の事はいいから、早く教室、戻って。」
「そっか?ならいいけど・・・・。あんま無理すんなよ?」
そう言って司が出て行くと、保健室の先生が蒼空から体温計を受け取り、溜息をついた。
「全く・・・。37.9度もあるのに、大丈夫じゃないでしょ大河君。」
「・・・・大、丈夫です。――――いつも司や彩華に頼ってばかりだから、僕の事ばかり気にして自分の時間がなくなって欲しくないんです。」
蒼空にとって司と彩華の存在はなくてはならないもので、まして今の彼には、二人がいなければ学校生活なんて一人では出来そうになかった。けれどそれが二人を束縛してしまっているような気がして・・・。これは彼なりの、出来る限りの気遣いで――――。
保健室の先生は再び溜息をつくと、氷枕を持ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!