贖いの行く末【転結】

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当主であり家長となるアングレカムが急逝した今、バルサムが息子が成人するまで育てねばならないのですが、手紙に書いてある通り、彼女がすぐに立ち直るという事は無理なのは容易に想像出来ました。 しかし、穏やかな治世となった世間では、"武"を誇った英雄という功績だけで"家"を支えるのは難しく、しかしながら国が運営する"学校"等の、企画案やカリキュラムが使用されていれば、その期間は制作者"名"と国に認められる機知(エスプリ)を持っている証明と、その功績は残ります。 また一度認められておけば、数年間はその"カリキュラム"に(のっと)り、その年度分の褒賞金が、国から支払われました。 支度は整っているということは、もう審査は通っていてシトロンが責任者と使うことさえ了承すれば、パドリック家の収入源は確保できるという算段は整っているのも想像するのは容易となります。 (ああ、思えばチューベローズは学生時代はバルサムに惚れていたとか、シトラスが言っていたかな) シトロンにしてみれば、想い人に関してはブッ飛んだ行動を取る美少女だったが、普通に眺める分には可憐な乙女でした。 そして今、大切な人を喪って心身共に弱っているバルサムを、世間から後ろ指差されずに支える為にはこの方法が一番妥当となります。 (まあ、私も手紙を読んだだけで"手助けをしてやりたい"と思っている分には、あのじゃじゃ馬を気にはかけている証拠だね) シトロンは小さくため息をついたのなら、グロリオーサ直筆の任命状をロブロウ領主息子夫妻に見せました。 『こういったわけで申し訳ない。出きれば、"お姉ちゃん"の方をこの手で取り上げたかったんだが、流石に"この方"の頼みを突っぱねると、王都の家族に迷惑をかけてしまいそうなんでね』 『グロリオーサ国王陛下、直筆の任命状ではないですか!』 シネラリアが寝台の中でも、軽く興奮して頬を紅くし、その横では、バンは驚きもあったがどこか"懐かしい"といった面持ちで、 そのダイナミックな文字で書かれている任命状を眺めています。 (シネラリアの今後が気になるところではあるのだが……) "妹の体を吸収してしまった、姉"という事実を、母親としてどう受けとめて、これから"一人娘"とどう接していくかが、気になってはいました。 (こればっかりは、産まれてからではないと判らない) 『……シトロン様は、国王陛下からこういった免状を受けとる程の方だったのですね』
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