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執事自身も嫌だと思っていた言葉は、どうやらロブロウの賓客となっている、決起軍の頭目にも耳が痛い言葉となります。
再び特徴的なキリリとしたはっきりとした眉を使って、眉間に深い皺を刻みながら、痛みを堪えるような表情を作り、"嫌な事"を言う執事を見つめました。
だが、ロックを見つめる黒目には痛みに堪える力強さはあっても、攻撃的な鋭さは全くといって良いほどありません。
『"鬼神グロリオーサ・サンフラワー"がいたから、仲間として認めて貰い、また側にいたから気持ちが強くなっていた。そして、そんな風に見えていただけか』
そんな否定の言葉を自分で口にしながらも、"信じる"という力強さが精悍な瞳の中にありました。
けれども"ピーン・ビネガーに変わって、説明を役目を引き受けた執事"として、ロックも引きません。
引かず、そして尚且、言葉にグロリオーサ・サンフラワーの"内"に入り込むような鋭さを意識します。
腹に力を入れて、先程唾を呑んだはずなのに乾く喉元から声を絞りだしました。
『ええ……、更に酷い言い方をしたならば、グロリオーサ・サンフラワーという"虎の威を借りて"、気持ちが強くなっていただけとも言わせて貰っても、障りはないかと』
(そうやって協力して"強い仲間"なったと信用して、もしも"弱さ"の為に裏切られたのなら……。きっとこのグロリオーサ様という"人"は……傷ついてしまう)
《早く、このロブロウから出て行って欲しい》
《ピーン・ビネガーの側から、離れて欲しい》
怒りばかりを抱いていたはずの相手なのに、今は主の興味という心を捉え、未だにそれ嫉妬もしているのに、彼が"傷ついてしまう"事の心配をしてしまっています。
"信じたい"というグロリオーサの真っ直ぐな力強い瞳に負けそうになりながら、それでも怯まずに、見つめかえした瞬間に執事の青年の頭に、ある声が記憶の中から掘り返されました。
信用して、裏切られて、傷つくのは貴方ですよ、グロリオーサ・サンフラワー
(これは……!?)
凛とした殿方の"冷たい"と感じるほど冷静な、でも熱くなりすぎた"情"を優しく冷やすようなそんな声が、ロックの頭に中に響きます。
『……やっぱり、ロック君はうちのアングレカムと似ているなあ』
そんな事を言う鬼神と呼ばれる存在が、傷つきはしてはいないが"悲しんでいる"のも執事に伝わって来ていました。
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