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直ぐに視線は"伴侶・執事・賓客"の3人を眺め、組んでいた脚を組み変えて、その膝の上に手を置き、今度は目元と口許の両方を使って、満面の笑顔をロブロウ領主は浮かべました。
賓客との会話に集中していた執事は、最初カリンが言っている意味がわかりません。
何とか堪えていた好意的な笑いを納めて、口許から手を外して主の夫人を見つめます。
『え?どうしてですか?奥様?』
『あのね、ロック。グロー様の話では、確か"トレニア"さんが……』
いつもの冷静で頼りになる、弟のような執事にカリンが説明を始めようとした時、ロックも夫人の疑問に思い当たることになります。
未だに似合わない考え込む表情をする人物を見つめて、ロックは思わず短く「あ」と小さな声を漏らしました。
(トレニア様は泣いたと、いいや、紫の瞳に涙を溜めて零れる直前に、俺の前から走り出した。走り出して決起軍……と言っても仲間4人のテントで、そこから駆け出して、ついでに、馬にまで乗って行ってしまって……)
グロリオーサ自身が、トレニアが馬に乗って飛び出したという事は口にしていたが、この考え込んでいる鬼神がテントから動いたという話は、一辺たりとも出ていません。
『……あ、奥様そうですよね。どうして"グロー様が迷子"になっているんでしょうか?その……トレニア様という仲間の方は、グロー様がおっしゃるには確りしたお方ですよね?しかし、話を聞いた限りでは迷子になるとしたらトレニア様が迷子でないと話がおかしいのですよね?』
いつものように執事が、自分が謂わんとする気持ちをわかってくれて、領主夫人は胸元に手を重ねて、小さく華奢な顎を動かしながら、喜びの声を出します。
『そうなの、ロック。お話を伺った限りでは、そう言う事になるはずよね?』
『ん!?トレニアがどうかしたか、ロック君に奥方殿?』
トレニアの名前を聞いてそこで漸く、話題の当事者は似合わない考え込む態度を止めて顔を上げ、"迷子の疑問"に目を丸くしている執事と領主夫人にも気がつきました。
『……ククッ』
そこで堪えきれないと言った様子で、膝の上に乗せていた手を目元に移動させて、抑えながらピーンが笑い声を漏らしています。
『何だ、面白い事でもあったかピーン?』
グロリオーサが普通に尋ねました。
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