昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その4ー

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執事にはグロリオーサがピーンと意気投合して、出会って数時間で親しすぎる関係を築いてしまった事には、抑えがたい程の嫉妬の感情を確かに覚えています。 但し、"ピーン・ビネガーと親密過ぎる事への嫉妬"を除いたところでグロリオーサ・サンフラワーと話し、彼に感じるのは好感の感情ばかりでした。 これが天性の気質というのか、カリスマというのか判りません。 しかし、ピーンに深く病的に依存している自分ならともかく、並の人ならグロリオーサ・サンフラワーという人柄に"惚れてしまう"という事は若い執事にも十分に理解できていました。 (そして、部分。それは決起軍に仲間の方達も同じ事) そんなことを考えて、こうやって彼と話して感じ、理解できたのは、豪快に豪胆でもあるグロリオーサが、見た目では比較ならないくらい、仲間を大切にしていることになります。 (仲間を大切にしている方なら、追いかけてこないでと言われても……、追いかけても不思議ではない。そして、探している内に迷子に……) それが一番の合点がいくと執事は考えましたが、ここで一旦考えを止めました。 《ついてこないで、貴方に泣き顔を見られたくはないの!》 (トレニア様にとっても、グロリオーサ様にとっても互いに大切な仲間。でも、もしもグロリオーサ様がとしたら) しかし執事には、これ以上の事を考えて想像巡らせることは難しいものになります。 ロブロウ領主であるピーン・ビネガーに依存頻りの彼は、"誰が誰に恋をするという考え"は、考えに考えぬいてたとしても、さっぱりわかりません。 ロックの"恋愛観"と言えば、精々本を読ん物語として知った程度のものとなります。 知っただけで理解している訳ではありません。 その読んだ本というのも、"執事の仕事が終わった後に自由に読んでも、良い"という事で領主で賢者でもあるピーンが、古今東西から集めたどちらかと言えば、文学書としての蔵書達になりました。 片付けが苦手な主の世話に追われて、なかなか時間は取れませんでしたが、雇われてから十数年という時間に機会には恵まれてもいます。 なので執事の青年は読むのも難解な、魔導書を除く一般的な文学書ならば、ピーンが集めた全ての蔵書を読破してもいました。 そしてその中には、この世界でも古典文学とも言われているが、"恋愛"について扱われている本もあります。
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