昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その4ー

42/44
6098人が本棚に入れています
本棚に追加
/450ページ
答えてはくれましたが、珍しく明瞭のな答えを避ける背の高い主をロックは見上げれば、相手は観念したように苦笑いを浮かべて、ロックの頭を撫でました。 『実をいえば私は、恋愛というものは、はっきりいって経験をしていないに等しい。幼い頃、親が決めてくれていた、領地の端のほうに住んでいる貴族というよりは、医者に近い父の友人の娘。 その娘である"カリン"というお嬢さんが、私のお嫁さんになってくれると聞かされて育った。 だから、私はお嫁さんになる人がいるのだからと、意識して御婦人については、出来る限り恋をしたりしないように努めていたよ。 まあそれより、"研究や絵を描くのが楽しい"が勝っていただけの事もあるけれどね』 一応"貴族"であるビネガー家ではあるので、ピーンも親が貴族の役割の一つとして所謂遊んではいましたが、両親はそれで不仲という事もなく、"それが貴族社会の倣い"として受け入れます。 それは、幼いピーンには悪影響を与えたという事もありませんが、全く魅力的でもなんでもなかったので、自分はしない事に幼少期に決意をしていました。 二次成長期を過ぎた時も、そういう事に興味が出まそたが、俗に言う"一般的な範疇"で無事に済んでしませ、序でに"1人旅"の時に後腐れのない店に行ったりもして、経験もしてもいます。 "自分にはお嫁さんになってくれる人がいて、待ってくれているから" 決して、新しい伴侶を探そうとしたり、他の相手という考えがピーンの中には浮かびませんでした。 手紙と肖像画でしか知らない年下の"許嫁"ではありましたが、他の相手を選ぶことで、彼女が悲しむのは嫌だと、ピーン自身が不思議と、頑なになっている部分もあります。 そして手紙をまめに寄こしてくれる、"カリン"という淑女が可愛らしいと感じてもいました。 『だから、ロックの疑問や不満に対して、参考になるような言葉になってなくてすまない』 苦笑いの顔を浮かべたままピーンは、優秀な執事に詫びの言葉を口にします。 『いいえ。……私は恋愛なんてした事はありませんし、する気もありませんから。でも、私は旦那様とカリン奥様のような夫婦の姿が、いちばん理想的だと思います。周りを巻き込んで、傷つけてまで続けてまでする"恋愛"なんて、少なくとも私にとっては価値がない、虚しいものです』 主に申し訳なさそうに謝られましたが、気が付いた時は、執事は首を横に振って主を全力で夫妻を肯定していました。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!