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幼少期は身体が少しだけ弱く父譲りの読書家の跡取りは、幼いながらも気を使い、思慮深い所もあったので、グロリオーサの返事を聞いてあっさりと納得した態で引き下がりました。
"グロー・ブバルディア"と口を効いたのに深く追求しなかったバンを、長女以外の姉妹が、口喧しく責められるのを、グロリオーサが偶然にだが目撃してしまい逆に気を申し訳なくも思います。
散々責められた後、連れだって行ってしまう姉妹を見て、バンは小さく嘆息し1人になって歩き出すのを見て思わず、グロリオーサの方から大丈夫かと声をかけてしまってもいました。
すると自分の背を遥かに越える、父の賓客にバンは薄く微笑みます。
『我慢強いのには、自信がありますから御心配なく。領主として父の場所を継いだなら、4人の小娘以上の領民の声を余すことなく聞かなければなりません。
……お客様も、色々とあるようですがご無理をなさらないようにしてください。それでは失礼します』
10歳以上は年が下であろうロブロウ領主の跡取りは、そう答えて礼儀正しくグロリオーサに頭を下げていってしまいました。
グロリオーサは呆気にとられたが、バンという少年の"我慢強さ"は、ピーンやカリンを越える物があると密かに感心します。
(父親のような鋭いと言った賢さはないが、落ち着いた知性をしっかりと持っている)
あの少年なら、普通の人なら根負けしそうな罵詈雑言を聞き流して上手い具合にこの領地を治めるだろうと、久しぶりに"王族"としての考えが浮かぶほどでした。
そうして正体不明ながらも、領民や領主邸の使用人達とは上手くやっているグロー・ブバルディアを尋ねて1人の青年が、ロブロウの関所にやってきます。
"アルセン・パドリック"と名乗る、日に焼けた緑色の瞳をした美丈夫は、関所に入った時点で、ロブロウの領民達を既に驚かせていました。
『……すみません、こちらに"グロー・ブバルディア"という図体がデカイ黒目と黒髪の人物がお世話になっていると風の便りに伺ったのですが?』
綺麗な顔ながらも、圧倒的な威圧感を醸し出しながら、関所の番人をしている領民に尋ねます。
『"アルセン"は"アングレカム"の偽名だ。決起軍を始める前で、俺の姪っ子のバルサムに出会う前に、子どもがもしも出来たならつけようと考えていた名前らしい』
グロリオーサが紅茶を飲みながら、ピーンに返事をしました。
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