昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その6ー

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執事は懐にいながらも、機敏に動き"失礼します"と断りを入れてから、片手で細剣を地面に丁寧に安置して、客人をしっかり支えるためにの肩に腕を回していました。 『……お見苦しい姿、すみませんね。やはり、この身体と私の魔力の量では堪えきれなかった様子です』 再び唇を感覚と記憶だけを頼りにして、アングレカムは動かし、いつもならば、眉間にシワを刻ませて言いそうな台詞も、表情は"無表情"で、綺麗な緑色の瞳は微塵も動きはしません。 それだけ、身体に力が入らないし、入れる事が出来いという状態でした。 『何を仰るんですか、並みの方の何倍という量の魔力だとお見受けしますよ!』 ロックは"視界"を切り替えないままアングレカムを助けた事で、未だに褐色の指先が落とした先にある古い絵本が、物凄い量の魔力を蓄えているのが見え、 その古くて立派な絵本は、辛うじてアングレカム指先にあって、中庭の地面に接していました。 『旦那様……』 ロックが指示を仰ぐように、アングレカムを支えたまま直立不動の主をアングレカムを支えながら、見上げたのなら、ピーンはアングレカムの防具を抱えたまま、褐色の指先にある"絵本"を睨んでいます。 (仄かに"意志"みたいなものを持ってはいるが……。まだ、何がどうしてという事は、ないみたいだな) 安全の保証のない、中身が判らない箱の中に手を差し込み中身を探るような感覚で、賢者は恐る恐ると絵本を見つめ続けていました。 そして今まで身に付けた知識を頭の中で、猛烈な勢いで辞書のページを捲るように漁って、"該当"する記録を捜索します。 しかし、"正体"がと証明する証拠はピーン・ビネガーの記憶の中に見つける事が出来ませんでした。 (アングレカムが"運んできた物"が、どういったものなのか正体は全く判らない) "賢者"の心に僅かだが"悔しい"という気持ちと、それ以上に"面白い"感情が瞬く間に芽吹きます。 (……コレハ、調ベナケレバ) 抱えていた防具を握る手に力が入り、ピーンの口の端がゆっくりと上がり、そして、それに気がついた秘書は躊躇った直後に、怒った声を出しました。 『……旦那様、!!』 怒りに"懸命で賢明"という響きを含ませた声を、ビネガー家の執事は出して"賢者"として、気持ちを逸らせようとする主人を引き留めます。
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