昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その6ー

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自分の(テレパシー)でどのくらいの感情が伝えられているか解らないが、ロックはありったけの"申し訳ない"という気持ちを込めて、アングレカムに向けて送っていました。 ロックが依存して、尊敬して、とても賢くて、強くて、行動力のあるピーン・ビネガーが1つだけ"上手ではないもの"となります。 はっきりと言うなら、"上手ではない=普通"を通り越した部類に入る"芝居"を目の当たりにして、アングレカムは眉間にシワを刻みながら、固まることしか出来ません。 "ピーン・ビネガーの芝居の下手さ加減"は、これは彼自身が気がついてはいませんでした。 (まあ、こんなもんだろう) 上機嫌でロックに(テレパシー)を送ってくる感じなので、真剣に"芝居の不味さ"に気がついていません。 ロックは忠実な執事として、何とも言えない気持ちになっています。 悪ふざけをする主なら、いくらでも諌めるし叱り飛ばす事も執事として厭いません。 ただ"好意"や思いやりでやっていると、"企み"事の成分がなくなるとなると、あっという間に下手くそ過ぎる芝居になってしまいます。 これは奥方にあたるカリンも知っているし、6人の子ども達も父親の意外な(長女を除いた娘達にはとしか見えなかったらしいが)として知っていました。 《悪ふざけを―――イタズラや、企み事をする際の"芝居"は、本当にお上手なんですけれど》 自分でも"理由(わけ)のわからない説明をしている"と思いながらも、アングレカムに主を庇う(テレパシー)を送ります。 《……それは、初対面の時にわかりました。うちの頭目(リーダー)がバカみたいに強いけれど、方向音痴みたいな感じなのでしょう。 "ロック君"の領主殿はこういった場面での"芝居"は苦手というご様子ですね。 ただ私も、ここまで"大根の馬の足"の方を見たのは久しぶりです》 慰めるようでいて、芝居関しての二重の皮肉の言葉(大根・馬の足等)を(テレパシー)でを送って来るアングレカムは、それこそ"こういった事"に余程慣れている様子でもありました。 "不機嫌"を表現するには不都合でもない、眉間のシワを刻んだままロックに続けて返事をします。 (とりあえず騒ぎの元を唆した私が言うのも何ですが、これ以上領主殿に口を開かれたら、不味いですね) 主人には申し訳ないが、ロックも切実にそう思いました。
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