昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その6ー

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(私が"尊敬するトレニアお姉さま"に言った事、したことを知ったのなら、今は気持ちを誤魔化そうとしても、婦人として成長した時。バルサムは、"アングレカム・パドリック"という人をきっと軽蔑するのでしょうね) 今はまだ可愛らしい顔が、成長して淑女となった時に、怒りと共に信頼を裏切った事への悲しみに歪む事自体が、アングレカムにとっては考えるだけでも(おもり)を飲み込んだように気が重くなります。 (出来れば、叶うのならば、トレニアに夢を叶え、バルサムに失望をさせたくはない) でも自分が考える"策"では、4人とはいえ非凡な力を持った人物がいたとしても、機動力に限界があっありました。 けれども、時間さえ許してもらえて、"このままの形"でいけたなのなら十分に可能だと思える流れにもなってもいます。 途中で、大きな戦力ともなっていた仲間、魔法の理屈に囚われない武器となる銃を扱うジュリアン・ザヘトが抜けるアクシデントもありましたが、それを補える人材が仲間になってくれていました。 けれども仲間に加わってくれた事で、仲間は唯一の家族である妹を喪います。 出来る事なら、これ以上仲間から"喪う"人が出て欲しくありませんでした。 (だから、もしも急ぐ事で彼女の"夢"を叶える事に間に合うというなら、急ぎたい) 涼やかな笑顔の裏でそんなことを考えながら、グロリオーサが先ほど料理事を口にしているのでこちらも料理の話題で返してみます。 『……それに料理というのなら、"トレニア"がセロリのスープを、グロリオーサが帰ってくるのに合わせて時間をかけて煮込んで作って、待ってくれていますよ。野菜嫌いの貴方のために、工夫して作った料理です。1日遅れたら、スープを煮込むタイミングをずらさないといけなくなりますし、彼女の努力が無駄になります。只でさえ、食事の分担は彼女が主にしてくれているというのに、これ以上迷惑をかけられませんよ。 こちらのマーサさんに、手間を取らせてわざわざ作ってもらうのも悪いですよ』 『……ア、アタシは、"グローさん"の為に食事を作ることを、ちっとも迷惑だなんて思ったことはないよ!』 アングレカムが、断りの為に名前を使われたマーサが突如口を挟み、口を挟まれた客人は、よく淑女達を虜にさせるその瞳で料理人を見つめました。
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