昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その6ー

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威勢の良いマーサは、それを"仲間を連れて帰るのを邪魔しないで欲しい"睨まれた位の気持ちで受け止めます。 だが褐色の美丈夫は睨む為ではなく、"監察"する為にマーサを見つめていました。 領主自慢の副竈番の婦人、見れば化粧っ気もないし髪も後ろにすべてひっつめていて、見た目としてはロックよりも年上にも見えますが、アングレカムが落ち着いて彼女を見れば、目尻は張りがあり、首筋などは十分瑞々しいものとなります。 (婦人と表現するよりは、"娘さん"と表現する方が、あのお嬢さんには、本当なら丁度良い年頃なんでしょうね) 自分の顔の"効能"を知っている美丈夫は、マーサが自分の外見が役にたってないと確認して、隣にいる親友を見ました。 (この様子ではグロリオーサは、気がついていない) そして再びアングレカムは考えます。 それは待っている異性の"親友(トレニア)"がこの状況を知ったなら、グロリオーサを連れて帰った時にどういう行動をとったならば、一番"安心"が出来るのだろうということでした。 (出来れば、トレニアにこれ以上心配事を与えたくはない) もし人の心を読みたくなくても読めてしまう魔女はここにいたならば、きっと本当なら誰にも読まれたくはない"マーサ"の気持ちも読んでしまってしまうことになります。 (いや、この場にいないにしても、グロリオーサの事だからきっと戻ったなら、トレニアを楽しませようとして、話しますね。そしての話を必ずする) ―――マーサの気持ちなど、微塵も知りもしないで、きっと楽しそうに、トレニアを探して迷子になった事で、彼女が気にしないでいいように、"友達"の話を、自分の横にいる人物はきっとするのが容易に想像できました。 恋愛に関して、グロリオーサに負けず劣らずに"朴念仁"の自負がある美丈夫(アングレカム)でしたが、実は自分の顔の効能ついて、併せるようにして、あることには気がつき易くはなっていて、一般的に"美形"と言われる造作であるアングレカムの顔には、ほぼ大抵のご婦人は見惚れてきます。 しかし、稀にアングレカム・パドリックを眺めて"綺麗だとは思いますが、という反応のご婦人がいました。 そういった方々には、決まってもう心の中に決めた"先客"がいる事が殆どになります。 恋心に疎いが、賢く観察眼が鋭い人には、今までの"彼女"の反応からそれとなく事情を察っせました。
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