昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その6ー

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正直に言って、ロックからしてみたら先程のマーサの発言から、アングレカムやピーンが"察した"ような事には気がつけてはいません。 ただ、マーサは自分と同じくらいに、命を懸けてよいくらい料理人という仕事に熱心で、と言ったアングレカムの言葉に、過剰に反応したのだと、ロックは信じていました。 (自分が誇りに思っている仕事に"ケチ"をつけられたのなら、マーサが怒りたくなるのも仕方ありません) マーサとの付き合いが浅すぎる客人の"失言"は、"世話焼き"という部分でアングレカムに対しては、好意的な思い持つ執事は仕方のないことだと思っています。 けれども、待っている仲間の元にグロリオーサを連れて帰りたいという客人の言葉はには、ロック個人としては多いに賛成をしていました。 (グロリオーサ様に、悪いところがないのは分かっているのだけれども……) マーサを手伝い、静かに紅茶のカップやポットなどを静かに片付けるつつ、視界の隅に、ピーンのやや強引な宣言から押し黙るアングレカムと、ある意味では板挟み状態になっているグロリオーサが入ります。 (……本当に、悪い人ではないのに、どうしてだろう) ピーンがグロリオーサに心を許して、話している顔を思い出すだけで悔しさを遥かに越える嫉妬が執事には溢れていました。 余所者に厳しい、保守的なロブロウの領民の心を十数日の間に、領主邸近辺に住む者の殆ど捉えてしまえるカリスマ性は、本当に素晴らしいと思えます。 アングレカムが迎えに来るまでの間、マーサの手伝いの間があいたなら、客人は暇潰しにと、領主の"許可"もあって邪魔にならない程度で手伝える事を進んで手伝いもしました。 "体が鈍ってもいけないし、馬鹿力があるから、使ってやってくれ" そう言われて開墾する土地の手伝いに参加させたなら、大人3人がかりで持ち上げようという岩を、一人で持ち上げたり、大木を例の太刀で"斬り"倒してしまったりと、圧倒的な力で領民の男衆の気持ちを掴みます。 何か揉め事などあったなら、鈍いようでいて、核心にある事には気がつき、それを口に出したならさっさと解決させてしまいました。 更には、意外なことに、(先程のトレニアに関する話を聞く事で納得は出来たが)、雨の日に暇で行っていた保育所の子どもの世話も上々となります。
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