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ピーンが賢者として集めている、異国の兵法として文献に載っている言葉を出して、それに反応できることに実は少しだけ驚いていました。
(グロリオーサ達の"世話"をした賢者は、本当に惜しみ無く与えていたのだな)
そして、先程アングレカ述べた言葉は決起軍の参謀となっている人物には結構な"皮肉"となる言葉でもあります。
《巧遅は拙速に如かず》
「巧遅」とは、出来はよいが、仕上がりまでが遅いという意味で、「拙速」とは、出来はよくないが仕事が早いという意味になりました。
"如かず"を後ろにつけ合わせて使った場合、ぐずぐずしているより、上手でなくとも、迅速に物事を進めるべきだという意味になります。
ピーンの言い方を簡単にいうならば、決起軍の平定の進め方、参謀アングレカム・パドリックの策は"出来映えは良くはないが、結果を出す速度だけはある"と言っている事になります。
文献に載っている言葉で、ある意味遠回しの皮肉を言ったなわけなのですが、グロリオーサが"賢い"という親友は、ピーンが口に出したのなら直ぐに意味を理解したようでした。
それは偏にアングレカム・パドリックの読解力と理解力もあっての事だとも分かります。
(グロリオーサやアングレカム、トレニアと去ったという仲間に、"智恵"と技術をと、武器をを与えることに、彼等の故郷に隠遁していたという賢者は、恐れはなかったのだろうか?)
自分の視線から逃げず、睨み返す青年を見つめながら賢者は更に考えました。
"知識"を含めて"技術"与えるにあたって、相手を慎重に見極めてから気を付けて与えなければいけないと、ピーンは考えている所があります。
そう言ったものは、薬や毒薬と同じ様なものと捉えているロブロウ領主兼賢者は、極力領民には本当に必要としない限り、魔術も知識も請われても教える事を控えていました。
それに加えて自分から学ぶ分には構わないのだが、簡単に技術や、やり方を教えろという考え方事態が単純に好ましくないとも思っているのもあります。
なんの努力も労せずに、"術"を手にしてしまったのなら、凄いのは"術"の方なのに、それを扱う側の"自惚れ"に繋がりそうで、それも恐ろしいこともありました。
知識と技術は扱い方次第で、扱う側の心を過信させて、増長し、勘違いを起こさせて、結局扱う側の"人の世"を乱します。
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