昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その7ー

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特に義母は、夫が囲っていた(諸事情はありますが最も適当な表現となる)実母に産ませた魔術も使え、智恵もあり労力にもなる、けれども自己主張は全くしない次男を、小作農ではあるがいずれは長子の補佐となれたのならと、育ててくれます。 しかし、王の庶子が出すという金の多さに正直に言って戸惑い、そして何よりも仲が良いことを知っていたので、そこに揺れていました。 父親は、一部始終を承知の上で、特に口に挟むことはありません。 アングレカム自身は、グロリオーサが金で自分の身を自由にしようしてくれているのは、本当に驚いたが嬉しく思えました。 だが自分を育ててくれた"家族"にも感謝はしてもいたので、育て親がダメだと言ったのなら従うつもりという気持ちもあります。 自分だけ外腹なのにも関わらず、変な気の使われ方をしないで、特に仲良くなるような事はなかったけれども、大人数の家族として実に巧くやっていたと思えました。 それは単にそんな事をする暇がないほど、農家の仕事が忙しいという背景もあったかもしれません。 ただ、幼い頃は長子は多少傲慢な素振りもありましたが、世話を焼いて貰った記憶があります。 そして自分も、頑是無い、半分の血の繋がりである弟や妹の世話を一緒にやいたりもしていました。 成長した今でも長子は傲慢な素振りはみせるが、彼なりに他の小作農に気を使っている事に、賢者に学ぶ時間を与えてもらえた事で察することが出来ます。 自分の容姿が整いすぎている事と外見が違うことで、揉め事が起こらぬように、努めて冷たく振る舞い、仕事だけは確実にこなしていました。 グロリオーサなどは単純なので、傲慢に振る舞う兄を多少悪く取っていた部分もあった事には苦笑を浮かべます。 しかし、賢者から学ぶ機会を与えられたアングレカムは、長子の兄は兄なりに、苦労をしていると気がつくことができていました。 彼にも"農家の長子としていきるしか自由がない"という、不自由さを抱えながらもそれを享受して生きています。 (もしかしたら、諦めのよいところは兄弟として"父親"に似ているところかもしれませんね、"兄さん") 学び、人の気持ちを推し量れる事ができることで、長男、次男、本妻の子、妾の子、"無用"な価値観で感情を乱すことは思春期が終わる頃には、アングレカムには全くなくなっていました。 だから、そうしてやがて、グロリオーサが自分の財産の6割を出して、アングレカムを欲しいと言った時に、親が、特に血の繋がりがない母親が、躊躇った事には本当に驚きます。
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