昔話  兵(つわもの)の掘る穴ー真実その7ー

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ただ大きな、恐ろしい効果をもたらす知識や技術も、扱う側さえ確りしていれば本当に素晴らしいものとなるのも、賢者は解ってました。 結局は扱う"人"に、責任も結果もかかってきます。 (少なくとも、決起軍の若者達は過信は全くしていないところは、術を与えた賢者の"慧眼"という所だな) 出会うことはおろか、名前すらも知らない決起軍(レジスタンス)の若者達に智恵と術を与えた賢者に仄かに、まるで好敵手(ライバル)に対するような気持ちがピーンの胸の内でもたげました。 そしてロブロウ領主は、アングレカムが"皮肉"を理解したと承知の上で、更に言葉を続けます。 『参謀アングレカム殿の策が云々は、後で話すとして、現実の話として変な(まつりごと)に日常を乱され、落ち着かない世の中は国の民は嫌だろうな。そして"上手で丁寧、だが遅い平定をもたらす決起軍(レジスタンス)"よりも、"下手でも、今の嫌な王政をさっさとぶち壊してくれる決起軍(レジスタンス)"を国民が求めているのは、確かだし、否定出来ない。 ロブロウみたいに小賢しい領主がいる領地や、主だった取り締まる領主がいない土地では、まだ比較的何とか"日常"を保ててはいるが、他は結構な被害が出ている。 特に、王政に対して"素直で穏やだった領地や領主"が目立って"不幸"と呼ばれる結末を迎えている話を、実際に私も領主として耳に入ってきた』 本来協力しあう、領主と領民が互いに(いが)み合う形にして、結果的にという結末は、国の方々で起き始めていると、新たに領主を任されている貴族の間のネットワークで回って来ていました。 ある意味堅実に、直向きに日々を送ることしか望まないような人ばかりが犠牲になっている惨状になってきている事に、ピーンは領主として苛立ちを抱えています。 そして何とか智恵を回して、政策の"罠"にはまらなかった土地の領民達もやはり"潰された領地と領民"の話を聞いてしまうと、穏やかではいられなくなる様子が広がり始めていました。 普通である日常の治安のレベルが多少悪くなったとも、連絡もあります。 (これはこれで、まるで、真綿で首を絞めるようなやり方に見えない事もない) 国の民たる領民の"不安"を見事に煽っていました。 そんな事を考えた時、(おもむろ)にアングレカムがピーンから視線を逸らさぬまま口を開きます。
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