Rolling Stone

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Rolling Stone

なんてことのない昼下がり、俺は屋上で自前のレジャーシートを敷いて、空を眺めていた。 特に大した理由なんてものはない。 単に俺が屋上に変な憧れを抱き、校則を破ってまで屋上での昼寝(実際寝ることは少ない)を満喫しているだけなのだ。 それに、ただでさえ憧れのあった屋上に《禁じられた場所》なんて甘美な響きがくっついたのだから、屋上好きならば行かないわけにはいかないだろう。 因みに友達が少ないから屋上に来ているという可哀そうな理由でないことだけは明言しておく。 さて、そんなわけで屋上ライフを満喫していた俺だが、思わぬ闖入者によって憩いのひと時は終わりを告げた。 バタンッ 「っ!?」 突然扉が閉まったので、俺は慌てて飛び起きて屋上の入り口を見る。 するとそこには一人の女子生徒がいた。どこか見覚えのある顔だ。 その子はつかつかと俺に歩み寄り、ぴたりと俺の目の前で停止する。 「な、なんだよ……」  別にビビったわけじゃないが、無表情で凝視されれば動じない奴は流石にいないだろう。 「これ」  その子はため息ぐらい短い一言を発し、俺に何かを差し出す。 BDが入っているらしいケースだった。 「これは……?」見ず知らず(一応見覚えはある)の相手に、この子は何を求めているのだろうか。 戸惑う俺に、その子は眉一つ動かさず説明する。 「これ、ゲーム。貴方にあげる。ゲーム、好きなんでしょ?」 片言のような端的かつ簡潔な発言に、俺はますます戸惑う。 な、何をしようというのだこの子は……。 まぁ、確かにその子に言われた通り、俺はゲーム好きな高校生だ。 もっと言えば、近年家庭内に普及するようになったVRMMOをこよなく愛する高校生だ。 これまでは、一回のプレイ料金が千円を超えるのが当たり前だったアーケード版が主流だったが、技術革新により急速に発達し、従来のゲーム達と同じくらい普及した。 ――と、話が逸れた。  とにかく要約すると、ゲーム好きでしかも最近やっているゲームは皆飽きて引退していしまい、次やるゲームに悩んでいた俺としては戸惑いつつもうれしい誘いだった。 「あ、ありがとう……」  俺がケースを受け取ると、その子は踵を返し――スカートが少し捲れたが惜しくも見えなかった――そのまま屋上を去ろうとする。
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