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ある日の夜中、悪魔でありながら人間に似た姿をした一人の青年が、月を背にして裏切り者を追っていた。
青年の名は"弟切紅牙"。
黒のトップスと白のドレスシャツに赤のパンツを合わせたバンドマン風な格好に身を包んでおり、首からはロザリオのネックレスが下げられていた。
この青年は、敢えて人間の姿を借りる事で人間の世界に馴染み、動き易くするという計画だった。
「ほぉら見えたぜ…裏切り者だ」
紅牙は、港近くの灯台の上から、人間とは比べ物にならない優れた視力で裏切り者を見付け出し、すぐにそこから飛び降りた。
その降下中、背中から突き出した蝙蝠のソレに似た巨大な翼を拡げ、降下から飛行に変わってすぐに裏切り者の元へと向かう。
そして、
「貴様の罪、己が血で洗い流せ!」
「…!!」
瞬時に首を跳ねて討ち取った。
その手には日本刀が携えられており、裏切り者の首を取るとその場でピタッと止まり、宙を舞う首に目を向ける。
そして、
「…っ!!」
そこから噴き出した凄まじい鮮血を、物凄い吸引力で口から吸い込み始めた。
その時の紅牙の眼は、まるで血のように真っ赤に染っていた。
そして全ての血を吸い尽くし、裏切り者の骸が干からびると、
「フゥ…」
紅牙はまるで少年のような笑みを浮かべながら口元を手の甲で拭い、またすぐに飛び立つ。
この時には、紅牙の眼の色は元に戻っていた。
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