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上も下も、右も左も前も後も黒と灰色が渦巻く世界。
そこには生の気配など無く、かと言って死の息吹も感じられない、ただただ無機質で無慈悲な空間。
それだけで完結された一つの異界に、今は七つの影があった。 影は円卓のような物の周りの椅子に腰掛け、互いに向き合っている。
「……そうか。 遂に動き出したか」
影の一つが呟く。 声質からして男性だろうが、この場所ではシルエットはともかく顔の細々とした輪郭などわかろう筈も無い。
呟いた影に、また別の影が答える。 輪郭と声質からして女性なのだろう、この中で二番目に小柄な彼女は首肯してこう続けた。
「はい。 規模にして五個師団、今までで最大の戦力……敵は今回で雌雄を決するつもりかと」
「それは早計だな、インウィディア」
が、女性の言葉を左隣にいた最初の人物とは違う長身の男性が嗤う。
「敵に龍騎士はいたのか? 奴らの主戦力は軍じゃない、龍騎士だ。 敵の一個師団なんかよりチカラを完全に我が物とした龍騎士の方が恐ろしい。 お前も忘れた訳じゃないだろう、先々代の龍騎士にこちらの歩兵二個師団、空獣騎兵隊及び駆獣騎兵隊を壊滅させられた事を」
「それは…………」
「そもそもだな、敵の練度はこちらよりも──」
「やめよ、スペルヴィア」
男性の言葉にインウィディアと呼ばれた女性は黙り込む。 それを肯定ととったか、男性はさらにつけあがって言葉を続けようとしたが、それを最初の男性に止められる。
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