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「えー、諸君らの新しい1年の始まりにあたり…」
鳥海先生に連れられて体育館にやってきた空は、始業式で長々と続く校長の話を聞き流していた。
ふと、後ろの席のクラスメイトが小さな声で話しかけてきた。
「ねぇ、ねぇって」
顔を横に向け、横目でそのクラスメイトの男子をとらえる。
「あのさ、今朝、岳羽さんと一緒に登校してたのって、キミだよね?見てたぜ。仲良さげだったじゃん?」
「別にそういうんじゃないよ」
「キミってさ、岳羽さんとどーゆー知り合い?つーか岳羽さんって、彼氏いんの?その辺、誰も知らなくてさ」
矢継ぎ早に質問を浴びせてくるクラスメイトに、空はうんざりしていた。
しかし、答えないといつまでも聞いてきそうな雰囲気を醸しだしていたので、事実を述べた。
「知らないよ。俺と岳羽さんはただ寮が一緒ってだけ」
クラスメイトはその言葉を聞いてあからさまに落胆の色を表情に表した。
他人の色恋沙汰に興味があるのはいつどの世界でも変わらないらしい。
「そっか…。いや、一緒に学校来たって言うからさ、知ってっかなと思ってさ。てかさ…」
「おやぁ?なんか話し声がしましたねぇ?鳥海先生のクラスの辺りですかぁ?」
クラスメイトが何かを言いかけた時、まとわりつくような嫌悪感を覚える声が耳に入った。
というより、わざと聞こえるように言っているのだろう。
別のクラスの担任のようだ。
今朝購買のおばちゃんとクリームパン云々言っていた先生か、と思い出したところで、空は自分でも自分の記憶力に驚いた。
「いけませんねぇ。新学期早々」
多少の笑みを含みながらその先生は、二つ隣の席の鳥海先生に向かって嫌味を言った。
教師同士のいがみ合いのようなものがあるのだろう。
「…ったく、静かにしてよ!怒られんの私なんだから!!」
鳥海先生も言い返したいのだろう。
しかし、今回はあの男の教師の言い分が正しかったので苦汁を飲んだ、というところだ。
あの先生、ネットとかではキャラ豹変して、あの先生の悪口とか言ってそうだな…と空は密かに思った。
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