“心の仮面”

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寮のラウンジ… 既に帰っていたゆかりと、見知らぬ男性が話している。 空が帰ってきたのを見て、ゆかりがその男性に空の帰寮を知らせた。 「あ、帰ってきました」 男は空に向かい、まじまじと観察するかのように空を眺めた。 「なるほど…彼か」 男は席を立ち、空の方に歩み寄ってきた。 空も男に近づいていく。 「やあ、こんばんわ」 「はい、こんばんわ」 「私は、幾月修司。君らの学園の理事長をしている者だ。イ・ク・ツ・キ。…言いにくいだろ?」 幾月と名乗る男は、さして困った様子もなく笑いながら言う。 「おかげで自己紹介はどうも苦手だよ。油断すると、噛みかねん…」 「はあ……」 逆に困った様子で相槌を打つ空。理事長と名乗るその男が、何をしに来たのか、真意を図りかねていた。 そんな様子を察してか、幾月は本題へと入った。 「部屋割りが間に合わなくて申し訳なかったね。正式な割り当てが決まるまでまだ少しかかりそうだ。それまで、ここにいることになるけど、構わないかい?」 「はい、構いませんよ。みなさん親切にしてくださいますし」 「そうか、それはなによりだ。さて、何か訊いておきたい事はあるかい?」 その質問に、空はここ数日の間疑問に思っていたことが頭をよぎった。そしてその答えをこの男は知っている。そう確信していた。 空はこの寮に来た晩に見たもの、体験した事を幾月に話した。 その話を聞いた瞬間、本当に一瞬だけ幾月は険しい表情を見せたが、次の瞬間にはその表情は消え去っていた。 「はて…なんなんだろうね」 「……」 ゆかりが空をにらんでいる。 そういえば、ゆかりに誰にも言うなと釘を刺されていたんだったと空はその視線の意味に気づいた。 「多分、疲れてたんじゃないかな?あまり気にしない事だ」 明らかに怪しいが、これ以上問い詰めても答えは聞き出せそうにない。 空はその質問に対して答えを求めるのは諦めた。 しかし、その答えはすぐに空へとやってくるのであった…
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