誤解

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はらはらと舞う雪に手をかざしながら、梨花はすぅーっと息を吸って再び口を動かした。 「河村さんと同じだったから」 …は? 俺はポカンとして梨花を見つめた。 「ちょ…何それ?意味わかんね」 「…私も…男なんて好きになれなかったから」 …ははは。 何だそれ? 急におかしくなって俺はクスクス笑い始めた。 「お前面白い事言うね、じゃ好きじゃないのに、木村と付き合ったりしてたの?」 「そう」 表情ひとつ変えずに言う梨花に、俺は笑うのを辞めた。 降りだした雪が梨花の赤い髪を白く染め始めたのを見て、 俺は少し先に見える屋根に覆われた足湯に黙って進んだ。 黙ったまま俺についてくる梨花。 そのまま俺は足湯のベンチに腰かけた。 立ったまま俺をじっと見つめる梨花と俺の視線が激しく絡み合う。 「河村さん」 「何?」 「本当は悲しくないですか?」 「…別に?」 「ふぅん」 そう言いながらもじっと俺を見つめる視線に、俺は耐えきれなくて視線を外した。 …なんだよ… 俺に何言いたいんだこの女… 「…お前こそ寂しくないの?」 そう言って、再び梨花を見上げようとした時、ふわっと梨花の香りが俺を包んだ。 …え? 何が起こったのか解らないまま俺が固まっていると、頭の上から梨花の声が落ちて来た。 「…さっきも言ったじゃないですか。 うそつきって」 「…………」 「私も河村さんと同じだから、解ります。 ホントはすごく寂しい事だって」 「…………」 「もっと自分に素直に生きてください。 河村さん見てると私、辛いです」 どう答えていいのか解らない俺は、ただそのまま梨花の胸に包まれてじっとしていた。 柔らかくて温かくて、ふんわりと石鹸の香りがする梨花の胸は、なんだかすごく心地良くて、このまま時が止まってしまえばいいのにって、女々しく思えてしまうくらいだった。 すっと俺から離れた梨花は、ニッコリと笑ったかと思うと、俺に背中を向けて歩き出した。 ・
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