誤解

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忘年会の会場までは、会社からみんなでタクシーに乗って向かった。 あのチャラ男の近藤を始め、梨花狙いの男が梨花の乗り込んだタクシーに同乗して行ったのを横目に、俺は専務たちと一緒のタクシーに乗り込む。 忘年会の会場は、会社から30分くらいの所にある温泉旅館だった。 俺と近藤たちの部屋と同じフロアにこの会社で唯一の女子の梨花は個室を用意されていた。 まるで特別待遇だな…。 部屋に荷物を置いて、みんなで浴衣に着替えて風呂に行く事にした。 「梨花ちゃんの浴衣姿、早く見たいっすね」 相変わらずヘラヘラ笑う近藤にイライラする。 「別に…俺、興味ねぇし」 そっけなく言うと、 近藤は目をキラリとさせて、 「今夜、梨花ちゃんベロベロに酔わせちゃおうと思ってるんすよ」 と言った。 「へぇ…そう頑張って」 そう言いながらも俺は嫌悪感を感じながら風呂へ向かって歩き出す。 曲がり角の所にある部屋の引き戸が開いて、浴衣姿に着替えた梨花がいきなり俺の前に現れた。 赤い髪を頭の上で結って、あらわになった白いうなじが怪しく光っている。 俺の心臓がドクンと音を立てる。 「あ、みんなもお風呂行くの?」「うっわー梨花ちゃん、超セクシー! 俺たまんねぇー…」 「近ちゃんありがと。でもあっちのお姉さんの方がもっとセクシーよ」 クスっと笑って、廊下を歩く他の女を指差して言う梨花。 舐めまわすような視線を送る近藤を殴り倒したい衝動に駆られたがグッと堪えた。 あのサービスエリアで食品サンプルをキラキラ眺めてた少女のような梨花とは大違いの、怪し過ぎるほど大人の女を感じさせる梨花のギャップに、俺は戸惑いを隠せなかった。 大浴場まで、自然と俺の隣を歩く梨花の横顔をチラチラと見つめる。 ほんのり香って来る梨花の怪しい香りに、俺は理性を維持するのが辛い。 当然のように梨花の隣では近藤が必死に梨花を誘っている。
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