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冷たく言い放った俺をじっと見て
梨花はゆっくり口を開いた。
「う・そ・つ・き」
俺が何も言えないまま、立ち止まっていると梨花はクルっと俺に背中を向けて歩き出した。
…何なんだあの女…
俺は遠ざかって行く、白いうなじをじっと見つめていた。
午後7時からは宴会場で忘年会が始まった。
当然梨花の隣に陣取った近藤が、どんどん梨花に酒を進めている。
俺はチビチビ日本酒を飲みながら、梨花の方をチラチラと見ていたが、梨花の視線が俺の方に向く事はなかった。
忘年会もだいぶ盛り上がって来て、やがて梨花のほっぺが真っ赤に染まって行く。
だんだんと近藤に寄りかかって行きそうになる梨花の姿を見ていると、ついさっきまで、この女を一晩で落としてやると意気込んでた自分が情けなくなって来る。
…アホくせぇ。
俺は8本目の日本酒を空けた所で、急にどうでも良くなり宴会場を出た。
そのまま旅館の玄関で下駄をつっかけると俺は夜の展望台へフラフラと歩いて行った。
俺らしくないな…ちょっと飲みすぎた。
今にも雪が落ちてきそうな空を眺めて白い息を吐く。
今頃、近藤に潰された梨花は、
アイツのふしだらな手に包まれている事だろう。
…考えていると、なんだか泣けて来る。
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