誤解

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再び夜空を見上げてため息をついていると、 後ろからカランコロンと響く下駄の音が聞こえた。 俺がゆっくりその音に振り向くと そこには頬を赤くしながら白い息を吐く、梨花が立っていた。 …は…? 何でお前がここにいるんだよ… 冷めたい澄んだ空気をまといながら、梨花はそっと俺の隣に歩いて来た。 俺が何も言えず、梨花を見つめていると、ホッとひとつ息を吐いてから梨花が言った。 「河村さん、飲みすぎですよ」 「…は?そんな飲んでねぇよ」 「そうですか?だって8合もひとりで空けたでしょ?」 …しっかりコイツ見てやがったのかよ。 …訳わかんねぇ女… 「近藤は?」 「えへ…潰して来ちゃいました」 舌をペロっと出して梨花が笑ったその表情が、あまりにも可愛くて俺はつい、いじめたい衝動に支配される。 「木村と…別れたの?」 唐突に放った俺の言葉に、一瞬梨花の息が止まった。 「…何で河村さんが知ってるの?」 「ん?前にいた時に、本人から聞いたから」 少し動揺して揺れる梨花の目に、俺はコイツの弱みを見つけた気がした。 「…もう、終わった事です」 「なんかあったんだろ?何抱え込んでんの?」 「河村さんには関係ないです」 「そうかもだけど、明らかにお前、動揺してんじゃん」 少し強気に出て、梨花を”お前”と呼んでみる。 「私がいけなかったんで」 「…へぇ?浮気でもした?」 「…違います」 「じゃ何したの?」 冷え切った夜空から、静かに雪が舞い始めた。  
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