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学院から王都に着いて、三人は馬車を降りた。
ユートはおっかな吃驚としながら、それでも興味深くキョロキョロしている。
思えば王都に来てそこそこ時間も経ってはいるが、落ち着いて街の見学をした事が無い。
王都──都というだけはあって、寒村でしかなかったアーメット村など、全く及びもつかなかった。
其処ら中、人、人、人。
地球で云えば、片田舎から東京に出て来て間もない人みたいなもの。
勿論、文明的に見たなら此処と東京は、アーメットと王都くらいに大きな差があるが……
「ユートさん、そんなに物珍しいですか?」
「あ、ああ。まともに観光した事が無かったから」
「そう言えばそうですね」
この世界の基本的な知識を学んだり、学院に入学するまでにある程度の腕を上げる為の訓練をしたりで、観光なんて考えた事もなかったからだ。
「ユートさんもシーナさんもはぐれたりしないで下さいね。捜すのも大変なんですから」
「了解」
「判ったよ」
クリスの注意にユートとシーナは頷く、それは何だか弟と妹を世話する姉みたいであったと云う。
暫く歩くとクリスが笑顔で言ってくる。
「ほら、お二人共。あそこが武具のお店ですよ!」
大通りからほんの少し外れた場所の細道の先には、いっそ清々しいまでに武器防具屋──武具店である事の自己主張をする看板が出ていた。
盾の絵の上で二本の剣が斜めにクロスされており、そんな看板を掲げていながらレストランを名乗ったら間違いなく詐欺だろう。
それくらいにRPGでの武具屋を彷彿とさせた。
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