第1話:終業式

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 カランコロン……  扉を開けると、来客を示す鈴の甲高い音が店内に響き渡る。  店はそれなりに広い。  とはいえ、武具屋である以上は武器や防具を置かなければならず、嵩張る武器などを置くならこの武具店の面積は、決して広いとは云えなかったりする。  棚の上に陳列された武器は基本的に安物らしくて、値札の数字が軒並み低い。  それは飾られた防具なども同じである。  それに、見るからに貧相な装飾だったり、無骨な造りだったりと高価そうには見えなかった。  棍棒、青銅剣、鉄剣など本当にRPGでよく見られる冒険序盤、大量生産品で始まりの街の武器屋に置く一山幾らの武器だろうし、防具も革鎧や旅装束などの安物ばかり。  置くばった場所には少しばかり高価そうな、そんな武器防具も置いてある様なのだが……  出入口の直ぐ傍にはカウンターが設置されており、情報紙へと目を通しながらチラッと此方の方を見遣るおじさん。 「リュナンさん、お久し振りですね」 「姫さんか。今日は?」 「この二人の武器や防具を探しに来たんですよ」  顔見知りなのか、クリスは武具店のおじさんと仲良く話を始めた。  【姫さん】なんて呼んだという事は、リュナンと呼ばれたおじさんはクリスの素性を知っているという事なのか。  ユートとシーナはリュナンに軽く会釈した。  リュナンは二人を無遠慮に見つめると、顎を擦りながら思案して口を開く。 「ふむ、そこそこは鍛えているみたいだな」 「え、見ただけで判るものなんですか?」 「ボウズ、俺は元冒険者なんだ。冒険者ってなーな、見て力量が計れなきゃ生き残れんのだ」  ユートの質問にリュナンが笑いながら、筋肉の付いた胸を張って答える。
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