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リュナンはそう言うが、ユートには彼の力が全く以て判らない。
それは取りも直さずユートが彼……リュナンに実力に於いて遠く及ばない事を意味している。
まあ、筋肉隆々な事から腕力は有りそうだ。
「どうした、ボウズ?」
「いえ、リュナンさんの力が俺には判らないから……俺が未熟なのかなって」
「そうだろうな」
「うぐっ!」
ハッキリと言われ、息を呑んでしまうユートだが、それも仕方がないだろう。
駆け出しとさえ云えないユートはいまだに卵以前、リュナンは少なくともこの年齢まで生き延びた熟練の冒険者。
ユートにリュナンの底を見通せる筈もない。
「ガッカリする事も無い。姫さんが連れ回してんだ、将来性が在るんだろうよ」
「そうですよ、リュナンさんに敵わないのを恥じ入る事はありません。そもそも年季が違うんですから」
クリスが邪気の無い笑顔で心を抉ってくれる。
ユートはとっても泣きたい気分となった。
「んで、姫さんよ。今日はボウズ達の武器を見繕いに来たんだったな」
「はい。お願い出来ますかリュナンさん」
「フッ、任せな」
リュナンはカウンターから出て来ると、ユートをジロジロと見やる。
「あ、あのう……?」
「ふむ、良い肉体じゃ」
「い゙っ!?」
リュナンの怪しい言葉にユートは青褪めて引く。
「言っとくがの、そちらの気など無いからな?」
ユートの反応を見ると、胡乱な目付きで睨むリュナンであった。
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