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「って、ちょい待ち!」
「? 何ですか?」
突然リュナンに呼び止められ、シーナは不思議そうな表情で訊ねる。
「何で坊主に三又の矛だの槍だのを奨めてんだ」
ユートの筋肉の付き方からいって突き出すタイプ、槍や矛は向いてはいない。
それが判るからこそ疑問を抱くリュナン。
人間というか生物の筋肉というべきか、或いは細胞というのか兎も角、生命体は基本的に環境に適合する能力を持つ。
例えば、環境が激変するとそれに合わせた作りへと変化──進化を促す。
逆に不要な機能を無くす退化も有り得るが、そんな生物は鍛えれば強くなり、鍛えるのを怠れば弱くもなってしまう。
ユートの筋肉は今までに使ってきた剣技や、武器の種類から既に刀を揮うのに最適化されていた。
リュナンもそれを見抜いたからこそ、引き斬る剣たる刀が最適だと判断して、故にユートの武器は置いていないと言ったのである。
それなのに、アッサリと槍を奨めるシーナ。
流石のベテランもこれには訳が判らなかった。
「そう言えば、リュナンさんには未だ言ってませんでしたね」
「あん?」
クリスは永年の付き合いなどもあるし、リュナンを信頼しているからこそ秘密を話す。
「ユートさんは装主です」
「な!? 姫さんが前に言ってた新しい装主か!」
驚愕するのも当然。
リュナンも装主(ロード)に関しては、ある程度だが知識を持っているのだ。
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