第1話:終業式

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「その昔、新たなる種族の誕生を促してしまったんですよ」  それは余りに突拍子もない話であった。 「現在の人種族は数世紀の年月を経る事で、多少の変遷がありました」 「変遷?」  ユートが首を傾げる。 「はい」  例えば、人馬族(ケンタウルス)と呼ばれる種族が昔は存在していた。  だが、現在は人馬族(ケンタウルス)は一人も居なくなっている。  理由は簡単で、今は暗黒大陸と呼んでいる地の一つに人馬族(ケンタウルス)は主に暮らしていた。  その暗黒大陸の一角に、新しい種族が現れて彼らを蹂躙し、滅ぼしてしまったのである。 「そんな……一つの種族を滅ぼしたってのか?」 「そうです。しかも、それは霊人族の愚かさが招いてしまった事態でした」 「え? そんな話だったっけ?」  シーナは目をパチクリと瞬いて記憶を探るが、習った歴史と異なっているのを再確認しただけだ。 「シーナさん、貴女が識る伝承と真実は別なんです。人馬族(ケンタウルス)を滅亡へと導き、少ないながら人種族の一つとして暗黒大陸を席巻する彼らは、元・霊人族です」 「「は?」」  シーナはその種族については既知であったが、それが元は霊人族だという話は初耳であった。 「この事は、今や各国首脳でさえ失伝により知らない真実ですよ」 「それじゃあ、クリスは何で失伝した筈の話を知っているんだ?」  ユートに訊ねられると、クリスは薄ら笑いを浮かべながら…… 「それはまだ秘密ですよ」  可愛らしく片目を瞑り、右人差し指を口元に添えて言った。 「ただ、彼らの発生のメカニズムは教えますけど」  クリスは、『内緒ですよ?』と言って話し始める。
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