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街に戻ったユート達は、取り敢えずその足でリュナンの店に向かう。
汚れたり壊れた装備品を、整備して貰うのが目的だ。
「リュナンさん!」
「おお、姫さんに坊主に嬢ちゃんじゃねーか。冒険の方は上手くいったかい?」
「はい、何とか」
苦笑いのクリスを見て、リュナンは首を傾げた。
予め聞いていた冒険は確か薬草を捜して来るという、割と簡単なお使い的な依頼だった筈だが、探索中に魔物と遭遇しただけにしてはボロボロ過ぎる。
街の近くにある森に出てくる魔物など、ユート達の力量ならどうという事も無いと見ていたが……
「何かアクシデントでも有ったのかい? えらくボロボロなんだが」
「はい、実は……」
クリスの説明を聞いて驚愕してしまうリュナン。
「莫迦な、彼処は魔素が少ねーんだから大した魔物が出るわきゃ……って、学園の裏山ん時と同じか!」
流石と言おうか、元は一流の冒険者だけあって直ぐに察したらしい。
「兎に角、装備品の整備を頼みたいんだ」
「成程な、確かに折角の装備品もこれじゃあ、次の冒険には使えねーからなぁ。確りと整備しといてやる」
「ありがとう、リュナンさん」
「応! 処で、遭遇したってのはどんな魔物だ?」
ユートの言葉に応えると、気になっていた事……果たしてどんな魔物と戦ったのかを訊ねてきた。
「樹木系の魔物で、食虫植物が巨大化したみたいな、謂わば食人植物って感じの魔物だったよ」
「食人植物? ウッディみてーな木じゃなく草みてーなタイプか。だとしたら、ウツボカズラーか?」
「うわ、まんまな名前」
地球の食虫植物に靫葛が存在しているが、よもやそんな名前の魔物が居るとは、夢にも思わない。
「うーん、でもあれって確か人間より少し大きい程度でしたよね?」
「そうだが、ひょっとしてもっとデケーのか?」
「はい、明らかに数メルはありましたね」
「なら、人間の倍以上か」
リュナンは、思った以上の巨体だと知って顎に手を添えながら考える。
「姫さん達が前に遭遇したっていうグレートグリズリーにせよ、今回の巨大なウツボカズラーにせよ、魔素の少ねー場所で有り得ねーレベルだな。どうなってやがんだか?」
「判りません。この事は、ギルドにも報告はします。証拠になりそうな部位を取って来ましたし」
「そうだな、そうした方が良さそうだ」
リュナンも肯定した。
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