第3話:新しい依頼

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武具をリュナンの武具店に預け、クリスを筆頭に城に戻って来ると、立派な白いドレスに身を包んで装飾が華美なアクセサリーを着けた女性が歩いてくる。 女性はクリスを一瞥して、ボソリと呟く…… 「チッ、化け物が」 「っ!」 それはクリスにのみ届き、ビクリと肩を震わせる。 女性は大勢の侍女を率い、俯くクリスに冷たい視線を向け、すぐにそっぽを向いて立ち去った。 ユートはギチリと歯を食い縛り、然し女性を極力無視してクリスを気遣った。 「さあ行こう、クリス」 「あ、はい……」 別館とも云える離れ城へと戻ると、クリスらしからぬ暗い表情の侭で静かに部屋へ入ってしまう。 クリスは部屋に入る際…… 「すみませんユートさん、シーナさん。私は少し仕事があるので、夕餉はお二人だけで摂って下さい」 「ん、判った」 閉められた扉の前で、ギュッと拳を握り締めながら、ユートは俯く。 「どうしたの、ユート?」 シーナは解らなかったが、ユートは女性の呟きこそ聴こえなかったが、あのけばけばしい色の唇の動きで、何と言ったか理解した。 「シーナ、悪いんだけど俺は少し用事が出来たから、先に食堂に行っていてくれないか?」 「それは別に構わないよ。だけど後でちゃんと話して欲しい。クリスのさっきの態度とか、あの女性の事とかが関係してるよね?」 「ああ。女性は多分だが、クリスの母親なんだろう。つまりは王妃様って訳だ。何と無くクリスは兎も角、エクセル姫様に似てたし」 「そうだろうね……」 シーナは難しい顔になり、先の女性の表情を思い出して苦々しく顔を歪める。 エクセル・ユア・フォルディア、クリスの姉姫である彼女は日本人っぽさのあるクリスと違い、地球で云えば明らかに欧州系の顔立ちであり、先程のエクセル姫やクリスの母親たる王妃らしき女性を優しい表情にすればエクセル姫になる。 ユートが見て取った唇の動きは、間違いなくクリスを侮蔑していたし、何よりもシーナが戦姫(プリンセス・リッテ)であると知ったアーメット村の村人達と同じ不快な視線。 気にならない訳がない。 「用事が済んだらすぐにも食堂に向かうから」 「判ったよ、待ってるね」 ユートは駆け出す。 そんなユートを見送ると、シーナは少しだけ淋しそうな顔になるが、ブンブンと頭を振って食堂に向かう。 もう一度、ユートが居ない先を振り返って。 .
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