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かくして俺は結婚延期を余儀なくされた。
マスコミ発表までは、俺達の関係を世間にバレないよう徹底するため、あくまで表面上は上司と部下。
俺達が婚約していることは、俺の第1秘書である村田と、ごく一部の人間にしか知らせていない。
第2秘書である奈央をパーティーに同伴するのも禁止!
どうせならパーティーがある時は、芹沢のお父さんのパートナーを務めてあげなさいという、うちの親父の助言により、最初は戸惑いながらも奈央も受け入れた。
かつて溝があった親子関係。
今は修復されていても、親子らしい時間を過ごせなかった奈央にとって、また父親にとっても、それは良いことだとは思える。
が、しかしだ!
俺の女だ! と言えないがために、今夜のようなパーティーじゃ、男たちが遠慮なしに狙いにきそうな気配だ!
俺の神経がピリピリと落ち着きやしない!
結婚は延期だし、付き合ってるのも内緒だし、それに加えて、俺達は今、一緒に住んでもいない三重苦。
いい加減、俺の胃に2つや3つ穴が開いちまうぞ?
まぁ、住まいに関して言えば、俺と奈央の部屋を買い上げ、そのふたつの部屋を繋げるために、半年前からリフォームに突入したから仕方ないとはいえるけど。
でもそれもやっと一週間前に終わって、避難的に実家に移り住んでいた俺は、サッサと戻ってきたというのに……。
忙しさを理由に、奈央はまだ都内の水野邸にいるときてる。
俺が戻ってこれたのに、その俺の秘書が忙しいって理由はおかしくね?
そうやって、いつまでも俺を放っておくから、鬱憤もマックス振り切ったっつーの!
「いつまでも怨めしげな目で見ないでよ」
……お、やっと相手する気になったか。
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