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「そういうわけだから、今夜は帰る。明後日、こっちに引っ越してくるから」
書類やらタブレットやら、俺よりよっぽど丁寧に扱われてるそれらを鞄にしまう奈央の隣で、俺は瞬時に考えた。
既に片付け始めてるってことは、今夜はこれ以上、ここにはいないってことか?
……何もせずに?
悶々とする俺を放置しなくても、せっかく2人きりなんだからチョットくらいイチャイチャしたって……
「どうしてもって言うなら、今夜泊まっても良いけど……でも準備が色々とあるから、そうなると明後日の引っ越しは無理かな」
どうやら奈央はエスパーらしい。
何もかも見透かされてる俺に、選択の余地はなくなった。
悶々か、明後日からのルンルン同棲生活復活か……。
当然……
「じゃ、ルン……明後日の日曜日な!」
「……るん?」
「いや、気にすんな! 明後日、気をつけて来いよ? 待ってるから」
「うん。急いで引っ越し業者探してみるから、こっちに来る時間分かったら連絡する」
「おう。じゃ、車出すから待ってろ。送ってく」
「大丈夫。水野の車、下で待たせてあるの」
そういって奈央は、さっさと玄関に向かった。
車あるなら大丈夫か
……って、チョット待て。
「奈央、最初からおまえ────」
「じゃ、明後日ね! これからまた敬介のコーヒーいつでも飲めるね! 楽しみにしてる! おやすみ!」
恋人らしい時間を過ごす気なんて、サラサラなかったんだな!
って、抗議を口にすることさえ許されず、颯爽と扉の向こうへと消えていった。
まぁ、いい。
もう少しの辛抱だ!
明後日になれば、ここでまた2人きりの生活が始まる!
その明後日を迎える日までの俺は、遠足前夜の小学生みたいだった。
嬉しさのあまりの興奮と、少しの悶々とに眠気を奪われても気分上々で、待ちわびていた念願の日曜日を迎えた。
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