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あれから2年。
時間に追われながらの生活は、何も変わっちゃいない。
あっちだこっちだと各地を飛び回っての視察は勿論。東京にいれば執務室で山になった書類を捌き、いくつかの会議へも顔を出す。
睡眠不足も慢性化してるっていうのに、仕事が早く終わりゃ終わるで、顔つなぎの為のパーティーがねじ込まれ……。
今夜も、そんなつまらないパーティーの中にいた。
近付いてくるのは、腹黒いタヌキ親父共。
何とかうちの社と繋がりを持ちたいと、企みを隠し脂ぎった顔に笑みを貼り付けられても、俺にとっちゃ不快以外のなにものでもない。
それに加え、色とりどりのドレスを身にまとい、化粧と香水の匂いを、これでもかってほど振りまく女狐共をかわすのは、もう苦行としか言えなかった。
もしも、俺の隣にアイツがいてくれたなら……。
こんなつまらないパーティーでさえ、穏やかに過ごせたのかもしれないのに……。
今のアイツの隣には、違う男がいる。
何度となく見かけてきた、色んなパーティーでのその姿。
やっと掴んだはずだった。
長い時を経て、アイツを……奈央をこの手に入れたと思ってた。
それなのに……。
あの婚姻届が提出されることはなかった。
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