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まだ花が咲かない並木を少し歩いて校舎の近くに来ると、いくつかの掲示板とそれに群がる人だかりがあった。
そこには、合格の喜びに浸っていたり、失意のまま帰って行く者がバラバラにいた。
そのなかで、一組の女子二人が抱き合っている様子が目立っていた。
翔達がそれに気づくと、真っ先に隼人が抱かれている少女――大沢優に声をかけた。
「その様子、優ちゃんも受かったんだね」
「あ、隼人君。そう言えば受けてたんだよね、どうだった?」
優からの質問に対し、隼人はニヤリと笑い、笑顔でVサインを返した。
その反応に優は一瞬面を喰らったものの、すぐに顔を紅く染めながら返事を返した。
「よかった、一緒に行けるんだね」
「俺もそう思う」
「妙に親密だな、あの二人」
隼人と優の様子に翔は疑問符を浮かべていた。
同じようにその様子を見ていた杏里と梨乃は翔に近づき説明をしだした。
「去年の暮れにスノボ行ったでしょ、その時にアドレス交換したんだって」
「あの時に隼人君、優ちゃん見て顔紅くしてただろ。多分優ちゃんに惚れたんじゃない」
「納得、あいつならやりそうだ。それはそうと……」
翔は杏里達の群れを離れると、優に抱きついている少女――大沢雪の脳天に時代遅れの空手チョップを炸裂させた。
そもそも雪は本来は優が喜ぶべき場面でなぜか自分のことのように嬉し泣きをしていた。
「いつまでお前は下らない三文芝居やってンだよ、見てる側の気持ち考えろ」
「だって、優が……」
「ったく、同じ姉ポジションなのにどうしてこんなに違ってくるんだ!?」
「私もそれを知りたい、ここまで極端に違うと対応が追い付かないんだ」
「秋川の気持ちがよくわかったぜ……。一方は才色兼備のしっかり者、もう一方は超天然ってな」
あまりに極端な対象の比較に、翔と美菜はため息をついていた。
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